どうやれば効率よく仕事を進められるのか。臨床心理士の中島美鈴さんは「時間管理を妨げているのは、能力不足ではなく考え方だ。まずは、時間に支配される『すべき思考』からの脱却を始めるべきだ」という――。(第3回)

※本稿は、中島美鈴『なぜあの人は時間を守れないのか』(PHP新書)の一部を再編集したものです。

ラップトップを操作するビジネスマン
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“〜すべき思考”が時間管理を妨げる

みなさんは、試験勉強前や大事なプレゼンの前、時間の許す限りの完璧な準備をして臨もうとするタイプですか?「もっと手を抜いていい」とか「がんばりすぎ」などと言われたことがありますか?

いざ本番を迎え、「なんだ、ここまで完璧に備える必要はなかった」なんて期待外れの結果を味わったことがありますか? これらはすべて「すべき思考」を持つ人の特徴です。たとえば、「納期までに絶対に完璧に仕上げるべき」「上司に頼まれた仕事は、どんなに忙しくても断ってはいけない」「部下にはいつも余裕のある姿を見せるべき」。

こうした考え方は、一見どれも立派です。しかし、ビジネスの現場では、こうした“正しすぎる思考”が、かえって時間管理の妨げになることがあります。このように、「〜すべき」「〜しなければならない」と自分を縛る考え方を、認知行動療法では「すべき思考」と呼びます。いわゆる完璧主義です。

ある広告会社に勤めるフジタさんは、どんな仕事も丁寧にこなす真面目な社員です。彼女の頭の中には常にこんな信念があります。「クライアントの要望にはどんなに遅い時間でも即レスポンスすべき」「頼まれたら、まず“できます”と言うべき」。

その結果、スケジュールはいつもぎっしり。朝から晩まで予定が詰まり、夜遅くまで残業。自分のtodoリストを眺めながら、「今日も全部終わらなかった」と自己嫌悪に陥っています。

真面目な人ほど仕事が中途半端になるワケ

フジタさんは決して怠けているわけではありません。むしろ責任感が強く、誠実です。それでもなぜ毎日が追われるように過ぎていくのでしょうか。

理由はシンプルです。「〜すべき」という思考が、優先順位を狂わせてしまうからです。「断ってはいけない」「中途半端なまま提出してはいけない」と思うあまり、本来後回しにしていい作業まで抱え込んでしまうのです。

すべき思考の特徴は、柔軟性のなさです。たとえば、フジタさんが「上司からの依頼は、どんなに忙しくてもすぐ対応すべき」と思い込んでいたとします。この思考が強いと、すでに進行中の重要案件を中断してでも上司の依頼に取りかかってしまいます。結果、両方の仕事が中途半端になり、納期直前にいつもバタバタと焦って混乱するのです。

「今はどちらを優先すべきか?」と考えられればいいのですが、「すべき思考」に支配されていると、判断より義務が優先になってしまうのです。つまり、時間を「使う」のではなく、時間に「使われる」状態になるのです。もちろん、「納期は絶対に守るべき」――これはビジネスでは当然の原則です。