優秀なリーダーとダメなリーダーは何が違うのか。臨床心理士の中島美鈴さんは「ダメなリーダーほど根拠がない推論をして、決めつけをしてしまう。優れたリーダーは結論を急がず、検証を速めることに注力している」という――。(第2回)

※本稿は、中島美鈴『なぜあの人は時間を守れないのか』(PHP新書)の一部を再編集したものです。

頭を抱えて悩む管理職ビジネスマン
写真=iStock.com/maroke
※写真はイメージです

褒められて素直に喜ぶ人とそうでない人の違い

想像してみてください。あなたはある会議でプレゼンテーションを担当しました。はりきって念入りに準備して挑み、終わった直後に上司から次のように言われたのです。

「声がよく通っていた」

あなたはどんな気持ちになりますか。ここで3人の社員に登場してもらいましょう。

まずは、上司の言葉をそのまま受け止めて、お礼を言ったAさん。「ありがとうございます! 緊張しましたが、がんばった甲斐があります!」

怪訝な表情のBさん。「声のことにしか触れないなんて、ちゃんと聞いてたんだろうか。この人」

どこか不安な表情が見え隠れするCさん。「声以外に褒めるところがないんだろうな。中身がなかったってことだ」

あなたは、3人のどの反応に最も近いでしょうか。同じ出来事を経験したはずなのに、3人の反応はさまざまですね。Aさんは喜んでいるし、Bさんは不信の念で警戒しているし、Cさんは自分を責めました。この違いはどうして生まれるのでしょうか。

「考え方」が心に影響を与える

多分、上司とのこれまでの関係性も大きく影響しているようです。生まれつきの性格も大きいでしょうし、学生時代の出会いやさまざまな経験も関係するでしょう。私たち人間はこの年齢になるまで実にさまざまなことから影響を受けて、今の自分に至っています。さまざまな要因の中でも「考え方」の違い、物事の受け止め方に注目すると、シンプルに影響を整理できます。

これまで過去にいろいろあったけれど、その影響を全部受けたレンズのようなものが「考え方」です。このレンズを通して、私たちは世界を見ています。レンズ次第で、いいようにも悪いようにも受け止められるかもしれません。もちろん経験する出来事にかなり影響を受けますが、事実以上に落ち込んだり怒ったり不安になったりするかどうかは、この「考え方」に強く影響を受けています。

一対の頭の模型の中にあるカラーボールを並べる図
写真=iStock.com/atakan
※写真はイメージです

「考え方」が感情に影響を与えることを最初に理論づけて説明し、うつ病の治療法を確立した一人がアメリカの精神科医のアーロン・ベックです。多くのうつ病の方を治療していたベック先生は、やがてうつの人に共通する考え方のクセに気づくようになりました。次第に彼は、この考え方を見直すことで、うつの辛い落ち込んだ気持ちを軽くできるようになっていったのです。

こうして生み出されたのが認知行動療法です。