ミスをする部下とはどう付き合うべきなのか。臨床心理士の中島美鈴さんは「『どうしてできないのか』と注意するのでは問題は解決しない。つまずいている現状を詳しく把握することが大事だ」という――。(第4回)

※本稿は、中島美鈴『なぜあの人は時間を守れないのか』(PHP新書)の一部を再編集したものです。

会議中にメモを取るビジネスマン
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書類の遅れ、契約間違いが多発する社員

ここである保険会社の社員ワタルさんの例をご紹介しましょう。ワタルさんは、「1つずつ順にこなしていく」という情報処理スタイルを持っていて、Aの仕事が終わってからでないとBの仕事が考えられないという、いわゆるマルチタスクに向かないタイプの人でした。

しかし業務上、同時に複数の顧客を管理して、それぞれのプロセスをこなしていかなければならないため、アポイントメントの取り忘れ、ダブルブッキング、契約の間違い、書類の遅れなどが多発していました。

大量のタスクを提示されて頭を抱えるビジネスマン
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上司は顧客リストを指差して、「ここでいつも“今月は誰の処理をすればいいかな”とチェックしていればいいだけなのに、どうしてできないの?」と理解できない様子です。

ワタルさんとしては顧客リストをチェックしているつもりですが、日々更新されるリストをいつも気にしていなければならない状況では落ち着きませんし、リストを見ておよそ何件分をこなさなければならないことはわかるような気もするのですが、具体的に何をどの順でやっていくのかもピンときていませんし、それが複数あると、どこから手をつけていいのか混乱してしまうのです。

「今日は結局、何をするのかわからない」とスケジュールを立てられずにいます。

部下の「できない」の裏側にあったもの

そんなワタルさんに対して、上司は実行機能モデルを示してこう言いました。「どこでつまずいているの?」。ワタルさんは顧客リストは見ていて仕事の内容もぼんやりとなら把握しているものの、計画立てができずに困っていることがわかりました。

マルチタスクに慣れないワタルさんには、顧客リストという一覧が与えられるだけでは、どの仕事を何日何時からどの順番でこなしていけばそれぞれの締め切りに間に合うかがわからなかったのです。

上司はそこでハッとしました。「君が言う計画立てができないって、もしかしてこういうこと?」。上司は、顧客リストから3名分のtodoリストを作り、ワタルさんの週間スケジュールに当てはめてあげたのです(図表1参照)。

「こんなふうにいつするかまで決めると、あとはその日が来たら上から順にこなすだけでいいんだ」

「ありがとうございます。そういうことなんですね。この通りにすればいいって思うと安心できます。計画ってこうやって立てるんですね」