238人のアンケートが示す「異常な熱量」
キャンプブームの終焉が囁かれています。キャンプ人口はコロナ禍で急増した後、減少に転じました。大手アウトドアメーカーの業績も軒並み厳しい状況です。しかしそんな逆風の中、発売と同時に即完売、イベントを開けば数百人の行列ができるアウトドアブランドがあります。「neru design works(ネルデザインワークス)」――インスタグラムのフォロワー約7万人に対し、直近3カ月の閲覧数は1200万回超。広告宣伝費はゼロです。
筆者は経営コンサルタントとして中小企業の競争優位戦略を専門としており、現在は大学院で技術経営(MOT)を学んでいます。その研究の一環として、neru design worksのファン層を中心に238人へアンケート調査を実施しました。
結果は驚くべきものでした。回答者の半数以上が同ブランドの製品に累計50万円以上を費やし、さらにそのうちの約半数――つまり全体の4人に1人が100万円以上を投じていたのです。ファン層中心の調査であるためバイアスは考慮すべきですが、モンベルやスノーピークと肩を並べるほどのブランドロイヤルティが、このガレージブランドには息づいているのです。
なぜ、この小さなガレージブランドがこれほどの熱狂を生み出せるのか。コンサルタントの視点から分析していきます。
テントに「穴」を開けた非常識な設計思想
暦は2月。本来ならキャンプはオフシーズンです。しかし近年、テント内に薪ストーブを設置し、氷点下のフィールドでTシャツ一枚で過ごす「冬キャンプ」が注目を集めています。この流れに決定的な役割を果たしたのが、neru design worksが2022年にリリースしたテント「CAVE」です。天井に最初から「薪ストーブの煙突を通すための穴」が開けられています。
大手メーカーは一酸化炭素中毒や火災のリスクを恐れ、テント内での薪ストーブ使用を推奨してきませんでした。当然、煙突用の穴が付いたテントなど作りません。しかし現場のキャンパーたちは自己責任で高価なテントにハサミを入れ、DIYで穴を開けていました。ニーズは確実にあるのに、メーカーが応えない。neru design works代表の重弘剛直氏(以下、neruさん)は、そこに切り込みました。
彼は単に穴を開けたのではありません。耐熱加工による安全な煙突ポートを、テント全体の美しいシルエットに溶け込ませ、「洞窟のような安心感」という世界観へと昇華させました。そして何より、メーカーとユーザーの間に高い信頼関係がなければ成立しない「自己責任の再定義」を行ったのです。
「大手はリスクを排除するためにやらない。しかし、日本の四季を本当に楽しむためには、冬の薪ストーブは不可欠だ」
大手が「禁止を前提とした設計」をする中で、彼は「使用を前提とした設計」を公言し、リスクと楽しみを共有できる成熟したコミュニティに向けてメッセージとともに販売しました。
この挑戦により、冬キャンプは一部のベテランだけのものから、多くのキャンパーが憧れるスタイルへと変わりました。その後、他メーカーからも煙突穴付きモデルが続々と登場したことが、「CAVE」のインパクトを証明しています。


