「つまずく」場所を正確に把握してあげる
ワタルさんはやっと腑に落ちた感じでした。まさにこのスケジュール表が自分のシングルタスクの性質に合致したからでしょう。上司としてもこれは衝撃的な体験でした。まさかここまで手取り足取りの援助が必要とは夢にも思っていなかったからです。
このプロセスで大切なのは、ワタルさんと上司がつまずいている現状を詳しく把握していったことです。そして「なるほど、ここでつまずいているんだ!」と共に探し当て、納得しながらスケジュール表を導入できた点が成功のポイントでした。
こうして本人が納得して獲得したスキルは、それ以降も使われ続けます。また、これで1週間をうまく乗り切ることができれば、今度は手応えが生まれ、ますます時間管理を主体的にやってくれることでしょう。
次に「スケジュールをメモしない」社員に対して、対処法以前に部下自身に自己理解を促すことで解決する例を見ましょう。
会議中、会社員のマエダさんはいつもどこか上の空です。議事には関心を示さず、手元の資料に小さなイラストを描いていることもしばしば。発言を求めても、「あ、すみません。今のところ、もう一度お願いできますか」と聞き返す場面が目立ちます。
頑なに言う事を聞かない社員の対処法
上司は、最初のうちはこう注意していました。「マエダさん、仕事は大事なんだから、ちゃんとメモをとりなさい」。
しかし、マエダさんはきっぱりとこう言いました。「大丈夫です。覚えてますから」。
その口調は穏やかでしたが、どこか頑なでもありました。ところが実際には、会議で決まった内容をよく忘れてしまい、後で確認が必要になることが多かったのです。上司はあるとき、気づきました。これは単なる怠慢ではなく、「自分の記憶力に向き合うのが怖い」からではないか、と。
人は、自分の弱点を指摘されると防衛的になり、「そんなことはない」と反発したくなるものです。マエダさんもきっと、注意されるたびに「できない自分」を認めたくなかったのでしょう。
そこで上司は、指導の方針を変えることにしました。直接「メモをとれ」と命じるのではなく、まず自己理解を促すことにしたのです。ある日の会議後、上司はこう声をかけました。「マエダさん、最近、覚えておきたいことをうっかり忘れてしまったことってなかった?」。

