タワマンの夜景を喜ぶのは、もはや庶民だけのようだ。いまザッカーバーグら超富裕層は「地下要塞」に熱視線を向けている。たとえば、1戸30億円の「地下20階の要塞」には、国家崩壊時も生き残れる「自給自足システム」と、ホワイトハウス級の「医療設備」があるという――。
高級ホテルのロビーとレセプション
写真=iStock.com/Explora_2005
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一体何のために? 「400億円の地下シェルター」

ハワイ・カウアイ島の静かな土地で、今、世界で最も注目される「住宅」の建設が進んでいる。

メタ(旧Facebook)のCEO、マーク・ザッカーバーグが手がける「コアウ・ランチ」だ。総工費は1億ドル、土地代を合わせれば2.7億ドル(約400億円)を超える。このプロジェクトの異質さは、米調査報道誌『WIRED』が2023年末に報じた詳細によって明らかになった。

この広大な敷地には十数棟の建物が点在するが、その核心は地上にはない。主要な2棟の建物を地下トンネルでつなぎ、5000平方フィート(約140坪)に及ぶ「巨大な地下シェルター」が建設されているのだ。そこには少なくとも30の寝室やバスルーム、会議室やキッチンを備えた12棟以上のオフィス兼居住区が広がっている。独自の発電システムと巨大な貯水タンクが備わり、防音仕様の「爆破耐性扉」で守られているという。

かつて富裕層が不動産に求めたのは「資産価値」や「美しい夜景」だった。しかし2026年の今、彼らが熱狂するのは、外界の混乱から物理的に遮断された「要塞」のような住まいだ。

世界が破滅しても、この家があれば生き残れる

ザッカーバーグの計画で最も注目すべきは、地下シェルターの堅牢さだけではない。驚くべきは、その「アグリカルチャー(食料自給)」への執着だ。

前述のWIREDの報道によれば、1400エーカーにおよぶ敷地のうち、約1100エーカーが農業・牧畜エリアとして確保されている。そこでは多様な農作物が育てられ、牛が放牧されている。これは単なる「オーガニック志向」の趣味ではない。万が一、世界の物流網や社会インフラが完全に停止したとしても、家族とスタッフがその土地だけで永続的に生存し続けられる「閉鎖生態系」の構築を意味している。

「窓の外に広がる美しい海」を愛でる以上に、彼らは「窓のない地下室で、自前の農地で獲れた肉と野菜を食べる」という安心感に400億円を投じているのだ。なぜ、このような極端なトレンドが起きているのだろう。

私たちの住環境に対する意識は、瀟洒な暮らしを誇示する“外”から、睡眠や食事の質を高める“内”に回帰している。特に、2020年以降のパンデミックを経て劇的に変化した。家は単なる「寝る場所」から「命を守る場所」へと格上げされたのだ。2021年にauコマース&ライフが行った調査によると、20代~60代の男女の6割以上が「健康意識が高まった」と回答している。高機能な換気システムや除菌機能付きのエアコンが爆売れし、誰もが「健康的な家」を望むようになった。