松本人志氏はテレビに復帰ができるのか
2024年11月8日、お笑いコンビ「ダウンタウン」の松本人志氏は、「週刊文春」が報じた女性への性加害に関する記事をめぐる名誉毀損の訴えを取り下げた。松本氏は「女性のなかで不快な思いをしたり心を痛めたりした方がいれば、率直におわび申し上げます」とコメントを発表した。
意気揚々とした「事実無根なので闘います」という当初の勢いからはずいぶんとトーンダウンした感があるが、これらの顛末に関してはさまざまなサイトで憶測が飛び交っている。もちろん、もし性加害が本当におこなわれたのであればそれは許されるべきではないし、そういった疑惑を先に晴らすのが筋であることも正論だ。
それらを大前提にしながら、この論考においては、私のテレビ局時代の暗黙知を踏まえ、先行事例やテレビの慣習、構造論などから、「松本人志氏は復帰ができるのか」というテーマに絞って分析をおこなってみたい。
結論から言ってしまおう。松本氏の「復帰は難しい」。そう断言する理由は、3つある。
2.「テレビ局」の横並び主義
3.「事務所」と「タレント」との関係値
まず、1.の「テレビ局」「事務所」「スポンサー」三者の自浄作用についてだが、この観点からの考察の際に参考になるのは、ジャニーズ性加害問題である。昨年3月にBBCによって告発番組が公表され、同年9月に旧ジャニーズ事務所が性加害の存在を認めた。そのときの対応の遅れによって、「テレビ局」「事務所」「スポンサー」の三者は社会から多くのバッシングを浴びた。
スポンサーの敏感な反応に追随した
特にテレビ局は、旧ジャニーズ事務所のタレントが大量に出演するCMに忖度し過ぎて、対応が後手に回った。「視聴者感情」よりも「スポンサーの顔色」をうかがったのだ。皆さんは、テレビ局は視聴者のために番組を作り放送していると考えているかもしれない。しかし、そうではない。もちろん「視聴者が見たがる番組」を作ることを目的にしている。だが、それは「視聴者のため」ではない。CM枠を買ってくれるスポンサーのためである。
ジャニーズ性加害問題のときと違って、今回の松本氏の疑惑に対するテレビ局の対応は比較的早かった。だが、それはテレビが前回の失敗を反省したからではない。スポンサーの敏感な反応に追随したからに過ぎない。