紫式部の娘、賢子とはどんな人物だったのか。歴史評論家の香原斗志さんは「18歳ごろ、母親の跡を継いで女房として出仕。その後、親仁親王の乳母に選ばれたことで、大出世した。だが、それは藤原道長の娘だからではない」という――。
OCNドラマ「ヴァンパイア検事2」の記者会見に出席した吉高由里子
ゲッティ/共同通信イメージズ
韓国・ソウルの上岩CGVで行われたOCNドラマ「ヴァンパイア検事2」の記者会見に出席した吉高由里子(=2012年9月4日)

紫式部の娘が藤原道長の子として描かれる理由

第26回「いけにえの姫」(6月30日放送)で、石山寺(滋賀県大津市)を訪問したまひろ(吉高由里子、紫式部のこと)は、藤原道長(柄本佑)とばったり会う。続く第27回「宿縁の命」(7月14日放送)では、2人のラブシーンが描かれ、それを受けて、まひろは女児を出産した。NHK大河ドラマ「光る君へ」の話である。

子は身ごもったものの、妊娠したのが、夫の藤原宣孝(佐々木蔵之介)がまひろに会いに来なかった時期に該当するので、必然的に道長の子ということになる。まひろは悩んだ末に、宣孝に離縁を切り出す。

それに対して宣孝は、「そなたの産む子はだれの子でもわしの子だ」「わしのお前への思いは、そのようなことでは揺るぎはせぬ」などと、度量の大きな言葉を並べた。しかも、宣孝は「その子をいつくしんで育てれば、左大臣様(註・道長)はますますわしを大事にしてくださる」とまで発言したから、子供のほんとうの父親がだれなのか、最初から宣孝は認識しているという設定である。

たしかに、まひろがこれから執筆することになる『源氏物語』では、不義の子が大きなテーマのひとつになっている。たとえば、主人公の光源氏と、彼の憧れの的であった藤壺中宮とのあいだに産まれた子が、桐壺帝の子として冷泉帝になる。

おそらく脚本家は、これから書かれる『源氏物語』の内容が、まひろの実体験と重なるようにしたいのだろう。