偏差値で重要なのは、全体における自分の位置
私たちが受験期に使っていた偏差値は、標準偏差の応用です。簡単に言えば、全体の中で「自分がどのあたりに位置しているか」をよりわかりやすく数値化したものになります。
平均身長170cmの例を使って、偏差値を出してみましょう。
まずは平均値を「偏差値50」と定め、標準偏差1つ分を10として扱います。この場合は平均身長170cmが偏差値50、標準偏差6cm分が10です。
たとえば身長176cmの男性は、
偏差値50(170cm)+偏差値10(6cm)=偏差値60
と計算できます。
身長164cmなら、
偏差値50(170cm)-偏差値10(6cm)=偏差値40
となるのです。
ただ、この偏差値40や偏差値60といった数字は、単なる計算結果でしかありません。偏差値で重要なのは、全体における自分の位置を考えることです。
図表5を見てみましょう。これは先ほどの身長ごとの偏差値をまとめたものです。
それぞれの偏差値の横に「上位何%」という数字が書かれていますが、意識すべきはこの数字です。
たとえば偏差値60ということは、上位16%に位置しているという意味。100人いたら上から16番目になる、ということです。
偏差値40なら上位84%。100人中84番目になります。
受験で偏差値が使われていたのは、この「上位何%」という考え方が重要だったからです。
「みんな」は標準偏差で人数がわかる
さて、先の記事でも問いかけ続けてきた問題に戻りましょう。「みんな」とは、一体誰を指すのでしょうか?
正規分布の考え方からすれば、みんなとは「真ん中の68%の人」というのが答えになります。極端な2%の人の意見は、「みんな」とは言えません。全体の16%の人の意見も、「みんな」と言うには無理があるでしょう。
つまり、冒頭の会話であった「取引先はみんなあんまり乗り気じゃなさそう」という意見も、正確には「約68%の取引先はあんまり乗り気じゃなさそう」と言うべきなのです。支持する取引先も16%はいる、ということになります。
取引先から一切支持されない施策と一部支持の施策では、改善案の方向性も変わってくるはずです。このように、正規分布で正しい数値を確認することは、現状を正しく把握することにつながります。
また、ちまたには「2:6:2の法則」というものがあり、社内で何か新しいことを始める場合、最初は「中立が68%、支持が16%、反対が16%」くらいになることが多い、とされています。その中に、極端な支持と不支持がそれぞれ2%ずついるというわけです。
実際に自分が所属する会社で考えてみるとどうでしょうか。
あくまで経験則から生まれた数字のようですが、それほど的外れな数字ではないように思えます。
それに、2:6:2の法則、あるいは正規分布と標準偏差の考え方を仕事に取り入れることで、さまざまなメリットがあります。
たとえば、一部の極端な意見に対し「2%は絶対にそういう人が現れる」と思えば、うまくスルーすることもできるでしょう。