2025年秋から「ネット受信料」の徴収がはじまる
「放送を主な業務としてきたNHKにとって、まさに歴史的な転換点」
ネット事業をNHKの「必須業務」とする改正放送法の成立を受けて、稲葉延雄会長は感慨深げに語った。
その通りだろう。
電波を伝送路とする「放送」は、1925年にラジオがスタートして、まもなく100年。テレビは1953年に始まり70年が経つ。それは、そのままNHKの歴史でもある。1世紀を経て、通信ネットワークを伝送路とする「ネット」がNHKの「本業」として制度化されることになり、放送でもネットでも同じ番組を見られる「放送と通信の融合」が名実ともに実現することになったのだ。
もっとも、世界の潮流は、とっくに「放送と通信の融合」を実現しており、遅ればせながらNHKもようやく仲間入りしたというところだ。
だが、安堵してはいられない。
NHKが切望していた「公共放送」から「公共メディア」への進化は現実のものになったが、同時に解決しなければならない根本的問題がいくつも提起された。
まず、NHKの原点ともいえる「公共」についてネット空間における意味があらためて問われることになった。その「公共」を支える受信料制度は、内在する矛盾が膨らみ、抜本的な見直しを迫られている。また、「必須業務」というのに放送とネットでサービスが異なり、疑念と不信が募っている。難題が山積しているのだ。
歴史的転換点に立った「新生NHK」は、2025年秋にもスタートする運びだが、それまでに、だれもが納得できる「公共メディア」の設計図を示すことが求められている。国民も、メディア界も、こぞって注視していることを肝に銘じなければならない。