海外の学校ではどのような性教育が行われているのでしょうか。漫画家の田房永子さんは「ある女性がカナダの中学校の性教育で、『初めてのセックスはどんなシチュエーションかを考えてくる』という宿題を出されたという話に衝撃を受けた」といいます――。
黒板を使って性教育の授業中
写真=iStock.com/DoloresGiraldez
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「男性の性欲は女性のそれとは比べものにならない」のか

日本の小中高では、第二次性徴として女性には「生理」があり男性には「射精」がある、と性教育でならうのが一般的だと思います。

生理は生殖にまつわることで、射精は生殖にまつわりながら性欲と切り離せない機能。それを男女の“対”として教わることで、暗に「女性には性欲がない、もしくは男性に比べてわざわざ教えるほどでもないくらい弱い」かのような印象が刷り込まれているように思います。

それにより男女がお互いの無理解は深まり、溝を複雑化させているんじゃないか。私はそう思ってきました

男性のように射精とセットになっていないだけで、生理と別のところにちゃんと性欲は存在しているし、「男性のほうが女性より性欲強い」とかそんな簡単じゃなくないか? 状況とか体調とかによってぜんぜん変わるし、個人差も相当ありますよね? どうも教科書で習ってきたことと、実際の出来事のつじつまが合わなすぎるんですよね。どう思います?

飲み会とかでこういう話を男性にすると「いやあ、男性の性欲をナメないほうがいいですよ」と鼻で笑われることがたくさんありました。ネット上でも「女性の性欲とは比べ物にならないのに何言ってんだ」と、話が平行線をたどって交わることはありません。

私にとってはその「男の性欲は女のそれとは比べ物になりませんよ」というコメントで会話が終了してしまうことこそが「生理と射精セットにして教えることによって女性の性欲ないことになってる問題」そのものなわけです。

カナダの性教育に受けた衝撃

そういうようなことを先日、トークイベント(B&Bで行われた『どうして男はそうなんだろうか会議』(筑摩書房)刊行記念)で話しました。

その会場にお客さんとして来ていた、ちゃんまりさんという女性が話してくれたカナダの性教育に衝撃を受けました。

日本の性教育ではまず、男女の体の違いや第二次性徴、精子と卵子と精子の受精についてを習います。だけど、ちゃんまりさんが通っていたカナダの女子中学校の性教育では2年生でまず「自分が初めてセックスをするとしたらどんなシチュエーションか」を考える授業をするんだそうです。

セックスはあくまでも、恋愛などの相手との関係性の流れの中にあり、コミュニケーションの一貫である、ということを先に教わるんだって。