幸せに老いる秘訣はなにか。評論家の樋口恵子さんは「まわりに何と言われようと、手放してはいけないものがある。尊厳を守るために、絶対必要なものだ」という。樋口さんが老いの悩みに答えた『そうだ!ヒグチさんに聞いてみよう 92歳に学ぶ老いを楽しく生きるコツ』(宝島社)から一部を紹介する――。
年金手帳と小銭
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長生きは喜ばしいが

Q1)60代半ばですが、老後のお金が心配になるときがあります。

物みな値上がりし、税金の負担も増えていきます。年金で生活する多くの高齢者には、うれしくない方向に世の中は向かっているようです。

先行き不透明なうえに、80代半ばまでの老後の資金計画を立ててはみたものの、人生100年時代が現実のものになりつつあり、「あと10年以上ある。どうしよう」と思っている方も多いのではないでしょうか。

私は、子どもは一人しかいないので、あまりお金がかかりませんでした。ずっと働いていたので、経済的には恵まれていたほうだと思っています。

ところが、84歳で家を建て替えた時には、虎の子の蓄えが少なくなり、落ち込んで暗い気持ちになりました。ですから心配のお気持ちは痛いほどわかります。でも、おかげ様で娘との快適な暮らしを手に入れました、財産の使い時というのはあるのだと、前向きに考えることにしました。

年金だけで暮らせる人は多くない

昔、「私は体が弱いからそう長生きはできない」と言っていた友人でも、70代を迎えています。70代になった人は、90%くらい90歳には達するという話です。ですから覚悟を固めましょう。

とはいえ、60代の相談者さんでもあと30年以上、気の遠くなるような未来です。それなりの年金があるとしても、それだけで暮らせる人はそう多くはないでしょう。

今の日本は空前の人手不足です。60代、70代でも現役で仕事をしている方は、いっぱいいらっしゃいます。仕事を探す、あるいは続けることで収入を確保しましょう。仕事をすることで、社会参加にもつながります。うまくご自分に合う仕事にめぐり合うことができれば、気持ちも前向きになります。