老後に必要なお金はいくらか。経済ジャーナリストの荻原博子さんは「定年後も働く高齢者の主だった出費はふだんの生活費である。年金と『ちょっとの稼ぎ』で老後は安心して暮らせるから、過度に老後の不安に駆られる必要はない」という――。

※本稿は、荻原博子『65歳からは、お金の心配をやめなさい』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。

テーブルの上の日本の年金手帳
写真=iStock.com/takasuu
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老後不安に駆り立てられる人への処方箋

「老後資金はいくら必要?」

そう聞かれたら、あなたはなんと答えますか?

「老後は2000万円、いや最低でも4000万円は必要だ」などと煽られ、多くの人が「老後の不安」に駆られています。

では、ほんとうに老後に必要なお金は、どれくらいなのでしょうか。

私は、一般的な会社員なら、年金と退職金と少しの貯金があれば、「悠々自適」とまではいかなくても、老後はかなり幸せに暮らせるのではないかと考えています。

厚生労働省の「国民生活基礎調査」(2023年)を見ると、年金だけで暮らしている人は41.7%で、年金以外でお小遣い程度の仕事をして暮らしている人も含めると約6割になります。また、高齢者世帯の約37%は、投資などしなくてもそれなりに暮らしています。

老後も働きたいという人たちに対しては、高齢者雇用確保措置の経過措置が2025年3月31日に終了し、4月からは、本人が希望すれば65歳までは雇用し続けなくてはいけないという義務が会社に課せられますが、これが70歳まで延長される可能性があります。

なぜなら国は、少子高齢化社会を迎え、高齢者にしっかりと働いてもらいたいと思っているからです。