市販薬も処方薬も成分は同じだが…
花粉が猛威をふるっている。外来にも、くしゃみ・鼻水・鼻づまり、目のかゆみといったつらい症状を主訴に、連日患者さんが訪れる。彼らの受診理由は、もちろん薬。これらの症状を抑えるための抗アレルギー剤の処方を希望しての受診である。
近年では、これらの抗アレルギー剤は対面販売を意味するOTC(Over The Counter)医薬品として、医師の処方箋がなくとも街のドラッグストアで購入することができるようになっていることをご存じの方もいるだろう。アレグラやクラリチン、アレジオンといった商品名をテレビCMで聞いたことがある人もいるだろうが、これらは、医療機関で処方されるものと成分は同じだ。
だがそれでも少なくない人たちが医療機関での処方を希望するのは、やはり金額の問題だろう。アレルゲンとなっている花粉の種類にもよるが、スギ花粉だけにしか反応しない人であっても2~3カ月は症状に悩まされるから、薬剤費もバカにできない。
たとえばアレグラの場合、ドラッグストアで56錠(1カ月分)を購入すると約3850円だが、医療機関にてジェネリックで処方されれば、それが3分の1程度に抑えられることになる(別途診察料などはかかる)。
ドラッグストアと病院の違いは何か
ドラッグストアで購入するのと、医療機関で処方される場合の違いは費用だけではない。医療機関で処方されるすべての抗アレルギー剤がOTCとなっているわけではないので、当然ながら薬剤の選択肢の幅は異なる。また薬剤の効果や副作用にかんする説明や、花粉症対策のコツについては、ドラッグストアでは十分にされるとはかぎらないし、アレルゲンの検索や薬の効果が不十分な場合の相談は、医療機関でしかおこなえない。
もちろん花粉症歴何十年というベテランで、毎年同じ薬を使ってさえいれば問題ないという人であれば、今さらアドバイスなど必要なかろう。対処法にも自分なりの流儀があって、余計なコツの伝授など不要、薬だけ手に入れられればよいと言うかもしれない。薬だけのために、わざわざ医療機関に行って待たされ、聞きたくもないアドバイスを聞いて時間を浪費するくらいなら、多少高くても、買いたいときに買えるドラッグストアのほうがいいという人もいるだろう。
だが、まだそういった花粉症のベテランではない人のなかで「薬を飲んでいるにもかかわらず症状がまったくコントロールできない」と悩んでいる人はいないだろうか。私は、昨今の花粉症の季節に流れるOTC医薬品のテレビCMを目にするたびに、そのような人たちの増加を懸念してしまうのである。