「国民病」とも言われる花粉症の症状を和らげるにはどうすればいいか。内科医の梶尚志さんは「アレルギー反応を悪化させる原因の一つが腸内環境の乱れだ。腸内環境を整えるには、食事からアプローチする方法がある」という――。

残念ながら2025年は「花粉が多い年」

いよいよ花粉症の季節が到来しました。

近年、花粉症の患者数は増加の一途をたどっています。環境省のデータによると、日本人の約42%が花粉症を発症しているとされ、特に若年層での増加が顕著です。

※環境省「花粉症環境保健マニュアル2022

スギやヒノキは、前年の夏に日照時間が長く、高温になると翌年の花粉の生産量が増加するため、2024年の猛暑の影響で2025年は「花粉が多い年」に該当、前年と比較して広範にやや多い予測が出ています。

※日本気象協会「2025年 春の花粉飛散予測(第3報)

2025年 花粉の飛散傾向(前シーズン比)
画像提供=日本気象協会

そのため飛散のピークを迎える2月〜4月はくしゃみ、鼻水、目のかゆみといった症状に注意が必要です。

2025年 スギ・ヒノキ花粉のピーク予測
画像提供=日本気象協会

こうした花粉症の症状を速やかに改善する方法として、腸内細菌叢(腸内フローラ)を整える方法があることをご存じでしょうか?

本記事では、栄養療法を実践する医師として、腸内細菌叢と免疫の関係を解説しながら、花粉症対策となる食品について紹介していきます。

腸のバリア機能が低下すると…

腸は「第二の脳」とも呼ばれ、体内の免疫細胞の約70%が腸に集中しています。腸内には100兆個以上の腸内細菌が存在し、それぞれが免疫機能と密接に関わっています。これらの腸内細菌叢は、大きく以下の3つに分類されます。

・善玉菌(有用菌):腸内環境を整え、免疫機能を正常化する
・悪玉菌(有害菌):腸内環境を悪化させ、炎症を引き起こす
・日和見菌:善玉菌・悪玉菌のバランスによって働きが変わる

これらの腸内細菌叢が乱れると、腸のバリア機能が低下し、病原菌や未消化のタンパク質が血流に入り込む「腸管漏出症候群(リーキーガット症候群)」が発生しやすくなります。これが免疫系を過剰に刺激し、アレルギー反応を引き起こす原因の一つと考えられています。

また、腸内細菌叢は「Tレグ細胞」と呼ばれる制御性T細胞の働きを強化し、過剰な免疫反応を抑える役割があります。特に、プロバイオティクス(善玉菌)とプレバイオティクス(善玉菌のエサとなる食物繊維やオリゴ糖)の摂取が、Tレグ細胞を活性化し、アレルギー症状の抑制に寄与することがわかっています。