せっかく貯めた老後資金を「有効に活用したい」と考えても、実際に老後生活を迎えると資産が減るのが怖くてなかなか使えない。Money&You代表取締役でマネーコンサルタントの頼藤太希さんは「資産を運用しながら、定率と定額で資産を取り崩していけば上手に資産を使い切ることができる。そのとき重要なのは何に使うか。あるものに使えば高い幸福度が持続することがわかっている」という――。
シャンパングラスを手に、63回目の結婚記念日を祝う祖父母
写真=iStock.com/Jone Agirre
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お金は使ってこそ価値がある

お金を使おうといわれても、やっぱり現預金を減らすのは不安……という方もいると思います。実際、子どもの頃、「お金は大事だからきちんと貯めなさい」といわれた経験のある人も多いはずです。では、なぜお金を貯めることが大切なのでしょうか。

それは、お金を貯めておくと将来時点で困らない生活が手に入るからです。たとえば、スマホや冷蔵庫といった生活必需品が急に壊れてしまうかもしれません。ケガや病気、リストラにみまわれることもあるかもしれません。ですが、お金があればすぐにこれらの問題に対処できるので、困りごとを減らせます。

お金は人生の選択肢を増やすためにも貯めておく必要があります。お金があれば当面の生活には困りませんし、働き方や今後の人生をじっくり考えることもできます。

一方、お金は使うことで叶えたい夢を達成し、豊かな経験をすることもできます。新たなスキルを習得する、海外旅行で自分の視野を広げる、といったこともお金があり、使うからこそできる選択です。

お金を貯めるのも大事ですが、お金を残して死ぬのは、もったいないです。人生の選択肢を増やすためにも貯めるだけではなく、上手に使う方法を知ることが大切です。

お金を使わずに残していく人が多い

お金を減らせるほど、十分なお金を持っていないので関係ない、と思う人もいるでしょうが、老後のためにお金を貯めている人は意外と多く、その老後資金をうまく使えていないという現状があります。

内閣府「令和6年度 年次経済財政報告(経済財政白書)」によれば、20代以降は歳を重ねるほど資産額が増え、60〜64歳でピークを迎えます。65歳時点の平均値は1800万円、中央値は1000万円です。しかしその後は資産額があまり減らず、80歳時点で1〜2割程度しか減っていません。

【図表1】年齢階層別の資産の保有状況
出典=頼藤太希、高山一恵『50代から考える お金の減らし方』(成美堂出版)

お金を使わずに残すという行為は、将来の不確実性に備えるための合理的な行動であり、お金があることで心の安定を得られることは事実です。しかしだからといって、老後のために貯めてきたお金をほとんど使わないのはもったいないです。