親の介護負担が原因で、介護者が心身の不調をきたすケースが増えている。介護・暮らしジャーナリストの太田差惠子さんは「介護は『できることとできないことを分けて考える』ことが大事。情で考えてはいけない」という。ライターの吉田潮さんが、自身の介護体験を踏まえて、太田さんに取材した――。(第3回)
親の都合と尊厳を大切にしていたら、子は自滅する
寝たきりの父の在宅介護を始めて数カ月。初めはおっかなびっくりだったが、痰吸引もおむつ交換も慣れてきた。「人間、慣れるもんだな」と思う一方、肉体疲労と先行き不安が半端ない。7年前に特養に入れたときはまさか在宅介護になるなんて想像もしなかったし、安心しきっていた。どう転がるかわからないのが介護だ。
さらに介護の悩みや苦労は人それぞれで、実は共有しづらいとわかった。モヤモヤと考えて鬱々とすることも多くなり、「介護うつ」が多いのも納得がいく。
そもそも親の介護は義務ではないのだが、どうしても子が罪悪感を覚える社会のしくみというか、風潮があるような気がしてならない。老親介護の現場を数多く取材し、わかりやすくてためになる介護情報を発信している介護・暮らしジャーナリストの太田差惠子さんにお話をうかがってみた。
「介護保険は要介護者、つまり親の尊厳を大切にしようというのが理念なんです。では子の尊厳は? と思いますよね。『認知症でも否定せずに聞いてあげてください』とか『モノがなくなったと言えば一緒に探してあげてください』とか、頭ではわかるけれど、すべてに応じていたら疲れきってしまいます。親に合わせて親の都合と尊厳を優先していたら、子は仕事や生活が維持できなくなり、それこそ体を壊すなど、自滅してしまいます。
逆に子の都合に合わせようとすると、親に本意ではないことをさせることになるから、ふつふつと罪悪感がわいてくる。介護殺人などの事件は、報道されないけれど、介護者が”介護うつ”になっているケースも多いと思いますよ」(太田さん)

