老化の原因になる食事は何か。同志社大学糖化ストレス研究センター客員教授の八木雅之さんは「アルコールの摂取は、老化の元凶となる物質を生み出す。お酒を飲み過ぎたときに頭痛や吐き気、倦怠感などが起こるのは、この物質が多く発生し、体の各器官にダメージを与えていることが原因だ」という――。

※本稿は、八木雅之『最新科学でわかった 老けない食べ方の新常識』(三笠書房)の一部を再編集したものです。

日本酒で乾杯をする人
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私が“デビル”と呼ぶ危険因子

アルデヒドこそが、老化を引き起こす悪の元凶です。

老化の最強の敵は、老化を促進する物質であるAGEs(終末糖化産物)ですが、アルデヒドはその背後で糸を引き、AGEsの大量発生を仕掛ける“黒幕”です。

やっかいなことに、アルデヒドは、私たちが食事をするたびに発生します。そして、糖化反応を急速に進行させ、体内にAGEsの蓄積を促します。さらに、細胞の機能に直接ダメージを及ぼすのです(※1)(※2)

それゆえ、私はアルデヒドを「超悪玉物質」「デビル」と呼び、老化現象の中心的な危険因子と位置づけています。

活性酸素が起こす酸化を「サビ」、AGEsを「コゲ」とするならば、アルデヒドはまさに「有毒ガス」――。

そうたとえても、過言ではありません。その証拠に、アルデヒドは糖化反応を糖の何倍も速く、あっという間に進めてしまう性質があるのです。

これまで、老化のプロセスは、

「糖質の摂取 → 糖化反応 → AGEsの生成 → 老化」

という順番で進行するとされてきました。しかし実際には、

「食事 → アルデヒドの発生 → 糖化反応 → AGEsの生成 → 老化」

というサイクルで老化が進行していくことがわかったのです。

ということは、アルデヒドの発生量を抑えることができれば、糖化反応も抑制でき、AGEsを蓄積させず、細胞の機能を守ることができるということです。

なお、アルデヒドとは物質の総称です。体内では、さまざまな物質からアルデヒドがつくられていきます。アルデヒドには多数の種類があり、その全貌は未解明です。

とはいえ、アルデヒドによる糖化反応のたどり着く先がAGEsであることは間違いありません。(※3)(※4)

ちなみに、AGEsも総称です。現在までに少なくとも百種類以上のAGEsが確認されています。未発見のものも数多く存在すると考えられています(※5)

未解明な部分が大きいとはいえ、アルデヒドによる健康リスクは明らかです。細胞を傷つけ、糖化を急速に進行させます。だからこそ、老化や病気を防ぐには、アルデヒドの発生量を抑える必要があるのです。

※1 LC Maillard, Compt Rend Acad Sci (Paris), 154: 66-68 (1912)
※2 Y Yonei et al, Glycative Stress Research, 10: 145-158 (2023)
※3 M Ichihashi, et al, Anti-Aging Medicine, 8: 23-29 (2011)
※4 M Yagi, et al, Glycative Stress Research, 3: 152-155 (2016)