なぜ中年男性は孤立していくのか。『モテない中年』(PHP新書)を書いた坂爪真吾さんは「自分の気持ちを他人に伝える手段をあえて持たないようにしているからだ。ただそれは彼らにとって防御策であり、生きる知恵でもある」という――。(第2回)
空き地に座り込み頭を抱える男性
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夫婦問題は「話し合い」で解決しない

新井悠介さん(仮名、44歳)さんは、結婚生活がうまく行かなかった原因について、セックスレスや家事に対する認識の違いを挙げ、妻ときちんと話し合うことができなかったことを敗因として認識している。確かに、話し合いは重要である。問題が起こったときに話し合えない夫婦は、長続きしない。しかし、新井さんと妻がきちんと話し合っていれば、セックスレスや家事の問題は解決したのだろうか。

答えは、おそらく「NO」である。私は夜の世界で働く女性の相談支援に長年携わってきたが、夫との関係がうまく行かないことに悩んでいる女性に対して、相談員が「夫と話し合いましょう」と回答する場面には、ほとんど出会ったことがない。相談者は、そもそもパートナーと話し合えない、話し合っても解決すると思えない、話し合ったけれど解決しなかったからこそ、悩んでいるのだから。

そうした相談者に対して、「夫と話し合いましょう」という回答をしてしまうと、「ああ、この人は私の気持ちをわかってくれないのだな」という印象を与えてしまい、何も問題が解決されないまま、そこで相談が終わってしまう。双方の話し合いを問題解決の手段として絶対視する「話し合い原理主義」は、一見正しいように見えるが、実際の問題解決にはあまり役に立たない。

大事なのは「同居力」

では、どうすればいいのか。解の一つとして挙げられるのは、お互いの違いを認め合ったうえで、性格や習慣の中で変えられる部分と変えられない部分を見分け、変えられる部分は積極的に変えていき、変えられない部分は無理に矯正しようとせずに、暮らしを組み立てていくことである。

一言でまとめると、「同居力」だ。生まれも育ちも価値観も習慣も違う他人と同じ空間で共同生活を送るためには、この「同居力」が必須になる。「同居力」は、料理や語学と同様に、後天的な学習によって身につけることができるスキルである。

夫婦生活を円満なものにするために真に必要なのは、ただ漫然と話し合いをすることではなく、学習と訓練の積み重ねによって、お互いの「同居力」を高めていくことなのではないだろうか。「話し合い原理主義」になってしまうのは、お互いに学習する意思や機会がないことの裏返しである。「同居力」を身につけるための技術は、学校では教えてもらえない。