なぜトランプ大統領は世論を無視して戦争に突き進んだのか。その背景には、外国ロビイストの跋扈を許したバイデン政権の失策があるという。「外国ロビー活動の禁止」を公約に掲げながら、ロビイストとの癒着を見て見ぬふりをし続けた4年間の実態を、調査報道ジャーナリストのケイシー・ミシェル氏の著書から紹介する――。

※本稿は、ケイシー・ミシェル『ロビイストに蝕まれるアメリカ』(草思社)の一部を抜粋、再編集したものです。

米国史上最もロビイストに厳しい政権のはずが…

ジョー・バイデンは、外国ロビー活動がもたらす脅威に対して、米国史上のどの主要な候補者よりも厳しい態度をとっていた。選挙遊説では「外国政府によるロビー活動の禁止」だけでなく、表向きは独立した企業による外国政権のためのロビー活動を可能にしていた抜け道を閉ざすことも約束したのだ。

この2つの公約は、外国ロビー活動に関する米国の政策において、アイヴィー・リーとナチスの時代以降で唯一かつ最大の変化を示すものだった。これによってバイデンは、外国ロビー活動がもたらす脅威の本質を真に理解している最初の大統領として位置づけられた。

2020年2月2日、アイオワ州の党員集会の前日、ジョー・バイデン副大統領はハイアット中学校で選挙集会を開いた
2020年2月2日、アイオワ州の党員集会の前日、ジョー・バイデン副大統領はハイアット中学校で選挙集会を開いた(写真=Phil Roeder/CC-BY-2.0/Wikimedia Commons

だが何年かすると、バイデン政権が公約を守りきる兆しが見えなくなった。さらに悪いことに、公約を守ろうとする意欲がほとんど感じられず、そもそもバイデンが自分の約束したことを覚えているかどうかさえ怪しくなった。

バイデン政権に公平を期すなら、一部には構造的な原因があるかもしれない。議会や政権がバイデンの提案する禁止措置を実施できるかどうかについては、いまだにさまざまな法的解釈がある。なんと言っても、外国ロビイストたちが仕事と活動の拠りどころとする「請願権」が、米国憲法修正第1条によって守られていて、彼らが主張する世界最悪の暴君たちの宣伝担当を続けてもよい理由の核心として存在している。

過去の多くの大統領たちとまったく同じようにバイデンもまた、ワシントン界隈でもてはやされていたさまざまな外国ロビイストたちと協力し合ってきたのもその一因と言える。

狙われたジョー・バイデンの息子

ジョー・バイデンの息子であるハンター・バイデンは、腐敗したウクライナのオリガルヒが経営するガス会社のために公然と仕事をしていた。ハンターが雇われたのは、ほかの外国企業との怪しげな関係でもそうだったが、ガス業界に関する専門知識があるからではなく、父親のジョー・バイデンとの関係、そしてその父親を望ましい政策へと誘導する潜在的な力を見込まれたからだった。

ハンター・バイデン氏、2013年の「Our Shared Opportunity: A Vision for Global Prosperity」会議での講演
ハンター・バイデン氏、2013年の「Our Shared Opportunity: A Vision for Global Prosperity」会議での講演(写真=戦略国際問題研究所/CC-BY-3.0/Wikimedia Commons

数百万ドルをかけたハンターの雇用は、残念なことに特殊な事例ではない。不正を行う外国企業や外国政権が、米国の政策に影響を与える手段として米国の政策立案者の親族を雇うのはよくあることだ。この悪しき慣習の始まりは、少なくともジミー・カーターの時代にさかのぼる。当時、リビアの独裁政権がカーター大統領の弟をロビイストとして雇い、フィリピンのマルコス独裁政権がカーターの息子をコンサルタントとして迎え入れた。

「米国の指導者たる人物が、どうしたらこんなことが許されると、自分を、そして国民を納得させることができたのだろうか?」と、腐敗防止に関する米国有数の研究者であるサラ・チェイズは語った。「もしこの国を救いたければ、敵にだけでなく、自分自身や友人や同盟国にも高い規準を求めなくてはならない」