バイデン政権の怠慢
あるいは、トランプ政権が米国のシンクタンクに求めた透明性の要件を見てみるといい。2020年、当時国務長官を務めていたマイク・ポンペオは国務省として、米国の外交官とかかわりをもつシンクタンクに対し、「国営および国有企業を含む外国政府から受け取った資金を、ウェブサイトに明示」するように求める声明を発表した。
最初のうちバイデン政権は、シンクタンクに対するこの新たな要求を継続し、外国の雇用主を公表させるつもりだったと思われる。
2022年の夏に、司法省はいわゆる「アドバイザリー・オピニオン」(助言的意見)を発表して、外国の資金を使って書籍を出版したり、外国政府と米国のあいだの「協力を促進」したりする組織は、FARA(※)に登録しなくてはならないと説明した。
つまりシンクタンクは、これまでやってきた仕事に関して、FARAへの登録が必要になったのだ。言い換えれば、たとえ政治とは無関係の独立した機関を装い続けたとしても、外国の影響、外国のロビー活動、そして外国の利益を実践する手段としての活動が登録の要件に該当するのだ。
しかし、この「アドバイザリー・オピニオン」にもかかわらず、バイデン政権がそれを大々的に実行に移すことはなかった。バイデン政権の当局者は、シンクタンクに対してFARAに登録するよう圧力をかけるそぶりも見せず、このテーマに関心があるようにも見えなかった。
※編集部註:1938年に米国で制定された法律。外国政府・政党・個人などのために米国内で政治活動、ロビイング、資金調達などを行う代理人に対し、司法省への登録と詳細開示を義務付けたもの。
ロビイストがやりたい放題できてしまう
それどころかそうした動きは弱まる一方で、シンクタンクは結果がどうなろうと気にせずに、外国の資金をむさぼり続けた。
ブルッキングス研究所の代表を務めるジョン・アレンのような人物(※)に関する綿密な調査や、湾岸諸国の専制君主やソヴィエト崩壊後のクレプトクラット(泥棒政治家)がいかに米国の一流シンクタンクに大金を惜しげもなく使っているかをあきらかにする調査が継続しているとはいえ、業界全体としては外国ロビー活動の媒介者としての役割を調べることにまったく関心がないように見える。
ましてや、彼らの組織がいかに外国政権の利益を促進しているかを示す情報をこれまで以上に開示する意向はまったくなさそうだ。
ホワイトハウス高官は、傍から見ているかぎり、ほとんど何も気にしていないようだ。2023年初頭に国務省は、シンクタンクにはもはや外国の資金を公表するよう求めてはいないことを認めた。いつのまにか、そして何の理由も示さずに、バイデン政権はトランプ時代の数少ない透明性重視の動きの1つを放棄していた。
どのシンクタンクがクレプトクラシー的な独裁政権から膨大な金額を受け取っていたか、またそれが米国の政策にどんな影響を与えているかに対するホワイトハウスの関心は、徐々に薄れてしまったのだ。
※編集部註:アメリカ海兵隊の元大将。退役後の2017年からブルッキングス研究所の所長を務めていたが、2022年カタール政府のために違法なロビー活動を行っていた疑いでFBIの捜査対象となっていることが発覚し辞任した。



