「東北大なのに、なぜか標準語が主流」
地方の旧帝国大学(以下、旧帝大)に通う学生たちの間で、近年ある違和感が広がっている。
「東北大なのに、なぜか標準語が主流」「北海道大の講義室、道産子こんなに少ないの?」という声を聞く機会が増えた。実際に、東北大では2019年以降、学生の出身地が「関東>東北」という逆転状態が定着し、2025年には北海道大学でも関東優勢に転じてしまった。
かつて、旧帝大といえば地場のエリートが集う場であった。しかし、昨今の旧帝大は首都圏出身者の流入が増え、もはや「進学疎開」の場となりつつある。こうした背景として、地元の学力低下、地方民の東京志向、首都圏の進学率向上、などの言説がまことしやかに語られている。本記事では、この地方大学の首都圏化現象について、データをもとに考察を深めていきたい。
進む関東出身者の「地方開拓」
まず、地方旧帝大における関東出身者の広がりをデータで見ていきたい。先陣を切っているのは東北大である。もともと関東圏から地理的に近く、材料系を中心とした研究志向の理系受験生に好まれやすいという背景はあるのだろう。しかし、2010年代後半に関東出身者が急増し、今や新入生の4割以上を占める状況となっている。北海道大ではこの動きがさらに激しく、たった10年で関東出身者は1.5倍以上となり、その増加分だけ北海道出身者が減少した。
こうしたトレンドは東北大・北大だけにとどまらない。京大や九州大でも過去10年で関東出身者がほぼ倍増し、大阪大・名古屋大でも緩やかに増加している。地理的距離の問題もあり、絶対数では依然として少数派ではあるものの、関東出身者の地方進出は全国的なトレンドになりつつある。
首都圏の過密な受験戦線から逃れた学生たちが、広大な地方旧帝というフロンティアに活路を求め、そこで地元のエリート予備軍を押しのけながら、新たな勢力圏を築いていく──そんな構図が浮かび上がる。



