脳の劣化を防ぐには何をすればいいか。脳内科医の加藤俊徳さんは「人間の脳は運動系、記憶系など180の『脳番地』に分かれているが、AIやスマートフォンに頼る現代人は、記憶系脳番地を使う作業をほとんどやめてしまった。わからないことはすぐスマホで検索する生活を続けていると、人類は記憶力を著しく失ってしまうのではないか危惧している」という――。

※本稿は、加藤俊徳『脳は右から若返る』(大和書房)の一部を再編集したものです。

AIチャットボットを使いながら勉強している学生
写真=iStock.com/Thai Liang Lim
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立ち上がった瞬間に何をしようとしたのか忘れる

これは年齢に関係ないのかもしれません。習慣性の物忘れが存在しているのではないか――最近、私はそう考え始めています。

複数のことを同時にやろうとしても、頭のなかでは1つしか保持できません。海馬に2つ以上の情報が同時に入ろうとすると、1つ忘れてしまうのです。

人間の脳は左脳と右脳にわかれており、全体で120ほどの「脳番地」がありますが、たとえば、「立ち上がる」という行為によって運動系脳番地を使った瞬間に、「立ち上がっていた」行為によって運動系脳番地が働いて、それまでやろうとしていた「ハサミを取りに行く」ことを忘れてしまう。

立ち上がって、3歩ほど歩くと、

「あれ? 何しようとしてたんだっけ?」

とうろたえる。ましな場合でも、

「ホチキス取ろうとしたんだっけ? ハサミだったかな?」

と頭をひねる。

これは昔もあった現象かもしれませんが、現代人の場合、AIがビッグデータからほしい情報を容易に取り出してくれる状況になっています。パソコンやスマートフォンのように打てば答えが出るもの、ボタンを押せば解決する道具の使いすぎ、依存しすぎが大きな原因ではないでしょうか。

【図表1】「海馬」は成長する!
出典=『脳は右から若返る』
海馬は大脳の下の部分の左右にあり、直径1センチ、長さ5センチくらいのタツノオトシゴのような形をしている。記憶の中心的な役割を果たし、短期記憶を長期記憶に変える働きにも関わる。適切に使えば成長して大きくなる。

なぜなら、情報を外部ディスクに入れてしまうと、脳は記憶系脳番地を使わなくてもいいと判断してしまうからです。自分で思い出そうとせず、外部ディスクの記憶を調べることに適応してしまうのです。