苦境に立たされる書店を支援しようと、経済産業省は「書店振興プロジェクトチーム」を発足させた。書店3軒を経営する小説家の今村翔吾さんは「書店の存続を気にかけてくれることはとてもありがたいことだが、そもそも、書店は本当に守るべき存在なのかを考えなければいけない」という――。

※本稿は、今村翔吾『書店を守れ!』(祥伝社新書)の一部を再編集したものです。

書店で平積みされている書籍にピントが合っている
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若手社員たちの涙腺が崩壊したひと言

本書は、祥伝社の編集者の発案でスタートしました。彼が企画書の段階で用意した仮タイトルは『書店を守れ!』。しかし私は時々、自問してしまうのです。「書店は、出版業界は、本当に守られなければいけないのか?」と。

本書の第三章で、取次(特に大手取次)はしばしば書店業界の“悪者”として扱われると述べました。この点について、私にはひとつ、忘れられない記憶があります。

ある時、大手取次の若手社員の前で、講演というのか、軽く話をする機会があったのです。私は第一声で、「ことあるごとに非難されて大変やろう」と言いました。「就職先として第1希望だったのかわからないけど、少なくともこの業界を志望したわけやから、君らもちょっとは本のことが好きなんだと思う。それやのに、書店員からこんなに文句ばっかり言われて、つらいやろう」。

そう言ったら、みんな泣き始めてしまったんですよ。こっちが心配になるくらい、おいおいと泣いている女性もいました。だから、私は「君たちがどれだけがんばっているか、しっかりと伝わっていない部分があると思う」と話しました。

書店は、本当に守られなければいけないのか

その時、私は思ったのです。こんなつらい思いをさせてまで、書店は守られるべきなのか、と。書店や出版社は、誰かを犠牲にしてまで残さなければいけないほど尊いのか。

書店業界の問題について語る時、私は「悪者探し」をしたくありません。だって、みんな、程度の差こそあれ、大半は本が好きでこの世界に飛び込んできたはずでしょう? それなのになぜ、たがいに傷つけ合わなければいけないのか。幼稚園の先生のようで恐縮ですが、「みんな、優しい心を取り戻そうよ」と私は言いたい。