リアル書店が消えて困るのは関係者だけ?

私たちが「書店を守ろう」と言う時、それは要するに、「(ネット書店だけになっては困るから)リアル書店を守ろう」ということだと思います。けれど、リアル書店がなくなって困るのは実際のところ、どんな人たちなのでしょう?

ひょっとしたら、その書店のオーナーや書店員が困るだけ、という可能性はありませんか。だって、アマゾンなら注文したらおおむね翌日に商品が配送されるし、『広辞苑』のような重たいものでも玄関先(入口または宅配ボックスも)まで届けてくれるし、検索ボックスに本のタイトルや著者名を入れただけで目当ての本が出てくる……。消費者からすれば、プラスしかありません。

では、リアル書店がネット書店にまさっていることはなんでしょう? 私たち業界関係者がよく持ち出すのが、「出会い」という要素です。欲しい本にダイレクトに飛んでいくネット書店と違い、リアル書店では店内をぶらつき、棚を眺めることで、それまで存在すら知らなかった本との偶然の出会いが生まれる(ことがある)。

書店で本を探している女子学生
写真=iStock.com/Enes Evren
※写真はイメージです

ネット上でも本と出会える時代になった

確かにその通りなのですが、2000年代半ばにリアル書店がネット書店に押され始めてからというもの、私たちはまさに「二十年一日」のごとく、同じことを言い続けています。「リアル書店には、ネット書店にはない、予期せぬ出会いという魅力がある」と。

しかし、この「出会い」という要素さえ、もはやリアル書店の専売特許ではなくなるのではないかという気がしています。

まだ実験段階ではありますが、2023年の「ニコニコ超会議」では、KADOKAWAと紀伊國屋書店が協力して、紀伊國屋書店新宿本店を仮想空間に再現した「メタバース書店」なるものを出展していました。そこでは、書店員が遠隔地からアバター(仮想空間上の分身)を使用して接客し、お客さんにぴったりの本をすすめてくれたとか。

これは著作権の問題をはじめ、クリアしなければいけない課題が多いでしょうから、そう簡単に普及するとも思えませんが、5年後、10年後にどうなっているかはわかりません。

客である私たち自身もアバターを使って、仮想空間上の書店を歩き回れるようになれば、これまでリアル書店の強みとしてさんざんアピールしてきた「出会い」の要素すら、ネットで代替可能になるかもしれない。