「書店振興」旗振り役の的外れ感

「出会い」のことはひとまず脇にくとして、他にリアル書店の存在意義はあるのか?

「書店振興プロジェクト」の旗振りをしている経産省は、書店を「サードプレイス(家庭とも職場とも違う第3の居場所)」や「地域コミュニティの核」にしようと言っているようですが、書店を経営している身からすると、「いったい書店に何を期待しているのですか」と聞きたくなります。

要は、地域住民が集まって、話して、何かを一緒にするような場所をイメージしているのだろうと推測しますが、そのようなスペースを設けるには最低でも5~6坪は必要です。

書店は1坪あれば約60万円の在庫を書棚に並べられますから、5~6坪ならおよそ300万円。それだけの在庫をあきらめて、地域コミュニティのためのスペースを作り、文庫本を1冊買った人に3~4時間居座られたら、商売は上がったりです。

根幹にあるのは「みんなで幸せになりたい」

この国にリアル書店を残したいなら、私たち(書店人、出版人、そして書店を愛する読者のみなさん)はもっと理論武装が必要です。私は一度、業界関係者で集まって、「リアル書店の良いところをいくつ言えるか」というゲームをしてみたい。ただし、「出会い」はNGワードです。そうでないと、みんな「出会い」の話ばかりするに決まってますから。

本稿ではひどく悲観的な見通しを並べました。読者のなかには戸惑いを覚えた方もいらっしゃるかもしれません。

青臭いと言われることは百も承知で述べれば、私の行動の大元おおもとにあるのは、「みんなで幸せになりたい」という考えです。逆に言えば、「本のことで不幸せになる人を見たくない」。

だから「本の甲子園」では、書店、図書館、作家のみんなにメリットがあるように事業のアウトラインを設計したし、現在準備中のECサイトでは、ネットで利益を出しながらリアル書店も支えるビジネスモデルを目指しています。