書店が完全に消滅することはないだろうが…
今は、書店も、取次も、中小の出版社も、作家も翻訳家も、みんな苦しい時代です。心の余裕がなくなって、批判の応酬が起きたり、はてはたがいに傷つけ合ったりしている。そういう状況を、ひとつでも減らしたい。それが私の切なる願いです。
けれど、努力や創意工夫をどれだけ積み重ねたところで、「この業界はもう商売として成り立たん」ということになったら、滅びるのもしかたがないと思っています。
もちろん、リアル書店や紙の本が完全に消滅するというのは、さすがに非現実的だと思います。三の丸、二の丸が落ちようとも、思い切りシュリンクした本丸は残るでしょう。ただし、それは非営利の文化活動のような形に変わっているかもしれません。
50年後の日本人に選択肢を残すために戦う
いっぽうで、私のなかには、「いつか滅びるにしても、俺たちの代で終わらせるのは忍びない」という思いも強くあります。歪な部分、不完全な部分が多々あるとはいえ、戦後から今日まで進化してきた出版や書店の文化には、優れたところもたくさんある。
それを、現在のような混乱期の勢いに乗じて、「書店なんて、出版文化なんて、いらんのや」と、数十年かけて築き上げてきた仕組みを放り出してしまったら、同じものはもう二度と作れないでしょう。
そうなった時、50年後、100年後を生きる人たちが、「なんであの時に潰してしまったんだ。あれはあれで良いことだってあったのに」と、先人の選択を恨む未来が来ないとも言い切れない。
50年後を生きる人たち、今日生まれた子供たちが、「いるか、いらないか」をじっくり考えて決められるように、選択肢を残すこと。経営者・事業者としての今村翔吾は、そのために戦っています。


