社会的に成功している経営者は何を基準に初詣先を選んでいるのか。富裕層マーケティングを長く手掛ける西田理一郎さんは「彼らは運気アップのために参拝するわけではない。『運』という不確定要素を極力なくし、運さえもコントロールしようとしている」という――。
大雪の花手水(赤坂氷川神社)
筆者撮影
大雪の花手水(赤坂氷川神社)

運を「マネジメント」するという発想

成功している経営者や富裕層と接していて痛感するのは、彼らが「運」というものを、天から降ってくる偶然の産物ではなく、自らの手で管理・運用すべき「資産」として捉えていることだ。

彼らにとって神社参拝や占いは、神頼みではない。あくまで「情報戦」の一部であり、勝率を1%でも上げるための戦略的行動なのだ。スピリチュアルという見えない世界の智慧を、彼らは統計学や環境心理学としてドライに活用している。

その徹底ぶりを示す一つの例が「時間」へのこだわりだ。

「方位学」という言葉をご存じだろうか。九星気学などに基づき、自宅やオフィスを起点として、特定の方角(吉方位)へ移動することで運気を取り込むという考え方だ。だが、本物の富裕層がさらに重要視するのは「どこに行くか」以上に、「いつ行ってはいけないか」という「引き算」のルールである。

ここで登場するのが「ボイドタイム(Void Time)」という概念だ。これは西洋占星術由来の考え方だが、多くの日本人経営者も参考にしている。月が他の惑星と特定のアスペクト(角度)を作らなくなってから、次の星座に入るまでの「空白の時間」を指す。

「ボイドタイム」と「日破殺」を恐れる理由

この時間帯は、月の効力が無効(Void)になり、判断ミスが起きやすいとされる。「そんな迷信を」と笑うなかれ。私が知るある著名投資家は、数億円規模の契約や重要な会議の日程を決める際、必ず秘書にこのボイドタイムをチェックさせ、その時間帯を避けている。「魔の時間」に決定した事項は、後になって白紙に戻ったり、予期せぬトラブルに発展したりするケースが多いという経験則からだ。

東洋の思想でも同様だ。九星気学には「日破殺にっぱさつ」という日がある。文字通り「破れる」日であり、この日に契約書にサインをしたり、登記をしたりすることは御法度とされる。彼らは、こうした「避けるべき時間」を徹底的に排除する。運気を上げる(プラスにする)ことよりも、致命的な不運(マイナス)を避ける。この「リスクヘッジ」の思想こそが、資産を減らさずに増やし続ける人々の鉄則なのだ。