五代目瀬川を落籍した鳥山検校とはどんな人物だったのか。歴史評論家の香原斗志さんは「法外な高利貸により財をため込み、江戸随一の大富豪となった。ただ、あまりに過酷な取り立てを行っていたため、幕府に指弾されることになった」という――。

決して円満では終わらなかった瀬川と検校の関係

吉原を代表する3つのイベントのひとつ「にわか」。毎年8月の1カ月、車のついた舞台に乗って、即興芝居を演じながら大通りの「仲の町」を練り歩いた俄の模様が、NHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」の第12回「俄なる『明月余情』」(3月23日放送)でリアルに描写された。

だが、祭りが終わると綾瀬はるかのナレーションはこう告げた。「われと人との隔てない幸せな時。けれど、それは俄のこと。目覚めれば終わるかりそめのひと時。その裏側で、世の仕組みはきしみはじめておりました」。

場面は松葉屋の看板の花魁、五代目瀬川(小芝風花)を1400両(1億4000万円程度)で身請けした盲目の富豪、鳥山検校(市原隼人)の邸宅に変わった。そこでは三味線を弾く検校から離れた位置に、物憂げに座る瀬川(名を「瀬以」と改めている)の姿があった。

2022年オスカープロモーション新春晴れ着撮影会での小芝風花(=2021年12月9日、東京都港区の明治記念館)
写真=時事通信フォト
2022年オスカープロモーション新春晴れ着撮影会での小芝風花(=2021年12月9日、東京都港区の明治記念館)

第12回がその場面で終わると、第13回「お江戸揺るがす座頭金」(3月30日放送)の予告が流れた。田沼意次(渡辺謙)が「もはや弱き者にあらず」と激しい剣幕で述べたが、その言葉は、鳥山検校ら盲目の富豪のことを指すと思われる。勘定奉行の松本秀持(吉沢悠)が「座頭金だよ」といい、蔦重こと蔦屋重三郎(横浜流星)も「座頭金」とつぶやいた。

そして、瀬川が泣きながら検校に「重三(蔦重のこと)はわっちにとって光でありんした」と訴える場面で予告は終わった。