日本のアニメは海外でどのように見られているのか。エンタメ社会学者の中山淳雄さんは「日本ではさほどヒットしていない作品でも、特定の地域で熱狂が生まれていることがある。2020年以降、これまで考えられなかった現象が起きている」という――。
「チェンソーマン」「SPY×FAMILY」に並んだ韓国発アニメ
世界中にいるアニメファン約2000万人が集う「My Anime List」は、アニメ好きのためのWikipediaのような存在だ。
3カ月ごとに60~70本放送される新作アニメのページが新設され、Members(メンバーズ、アニメをリストインしている人)、Score(スコア、アニメ評価)、Popularity(Members数の歴代ランキング)、Ranked(Scoreの歴代ランキング)の4つがトップに表示される。当然海外のアニメファンのためのサイトであり、すべて英語。
ここはエンタメを研究する私のような立場の人間にとって宝の山だ。6~7割が10~20代の若者世代、5~6割が欧米ユーザー、あとはアジア・南米などで日本人はほんの1%未満、という純粋な「日本人以外のアニメファン」サイトだ。
ネットフリックスや海外における最大級のアニメ配信サイト・クランチロールによって世界中に配信されたアニメをどう受け止めているかのリアリティーが、ここにある。
2025年1月~3月期は、海外人気だけでいえば『俺だけレベルアップな件(俺レベ)』一強、ということになる。
アニメ放映前のタイミングでメンバーズは49万人。これは同タイミングの『鬼滅の刃 柱稽古編』28万、『【推しの子】第2期』22万の倍以上で、近年のアメリカで最大級の期待値をもたれた『呪術廻戦 懐玉・玉折/渋谷事変』35万を超えるほどに“期待が集まっていた”作品である。
メンバーズは放送期間を終えた25年3月末の時点で、82万人まで増えた。過去数年でみても『チェンソーマン』や『SPY×FAMILY』など大ヒットアニメと並ぶ水準にまで到達した、“お化けアニメ”と言える。