仕事がデキる人は何が違うのか。マナー講師の諏内えみさんは「本題に入る前の数分で『相手の心をつかめるかどうか』がその後の成否を分ける。ここで試されるのが雑談力。最高のお手本が、皇后雅子さまだ」という――。

雑談は「仕事の成否を分ける武器」である

仕事始めから1週間以上が経ちました。

「今年こそは結果を出すぞ」と、提案内容を練り上げたり、資料の準備に余念がない人もいるでしょう。

ところが、どれだけ準備に力を入れても、資料を広げる「前」の段階で、すでに勝負がついているケースが少なくありません。

その明暗を分けているのが、冒頭の数分間に交わされる会話――すなわち「雑談」です。

あなたは雑談を「本題に入る前の場つなぎ」や「沈黙を埋めるための軽い会話」だと思ってはいませんか?

もしそう考えているなら、ビジネスにおいて大きな損をしているかもしれません。

成否は、「本題」以前に、信頼の扉を開くことができたかどうかに左右されます。

「話すのが苦手だから……」とあきらめてしまう人がいますが、話の得手不得手は、本質ではありません。

相手が心地よく話せる「舞台」を整える力。

それこそが、一流の雑談力なのです。

皇后雅子さまは最高のお手本

では、相手の心を掴む「舞台」をどう作ればいいのか。その最高のお手本といえるのが、皇后雅子さまです。

天皇、皇后両陛下。写真は、モンゴル訪問を終え、チンギスハン空港で関係者かた見送りを受けられた際のもの=2025年07月13日、モンゴル・ウランバートル近郊[代表撮影]
写真=時事通信フォト
天皇、皇后両陛下。写真は、モンゴル訪問を終え、チンギスハン空港で関係者かた見送りを受けられた際のもの=2025年07月13日、モンゴル・ウランバートル近郊[代表撮影]

雅子さまの外交における対話が世界から称賛されるのは、単に語学が堪能だからではありません。相手の背景や心情を深く理解し、尊厳を傷つけない「徹底した準備」と「知的配慮」があるからです。

象徴的だったのが、2019年5月、アメリカのトランプ大統領(当時)夫妻をお迎えした際のことです。

メラニア夫人は「クール・ビューティー」として知られ、公の場では常に隙を見せず、どこか緊張感を漂わせている印象が強い方でした。

しかし、会見が始まると夫人の表情は一変。最後には夫人の方から身を乗り出すようにして話をされるほど、心を開かれたといいます。

なぜ、そこまで短時間で信頼関係を築けたのでしょうか。

実は、雅子さまはこの日のために、入念な準備を重ねられていました。夫人の出身地であるスロベニアと米国の歴史書を紐解き、夫人の過去のスピーチや、子ども関連の施設を訪問された活動内容まで、事前にすべて確認されていたといいます。

【Close-up】コミュ力が高い人の「絶妙な雑談」はこちら
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その上で、雅子さまが選ばれた話題は「子育て」でした。

夫人の活動実績から、「大統領夫人として、母親としての視点を大切にされている」と推察し、その「想い(情緒)」に寄り添う話題を選ばれたのです。

これは、単に「あなたの経歴を知っています(情報)」というアピールではありません。「あなたが大切にしているものを、私も尊重します(情緒)」というメッセージです。

一見、自然な会話に見えても、その裏には相手への深いリスペクトと、緻密な計算がある。これこそが、一瞬で相手の心を掴む「雑談力」の真髄です。

The WHITE HOUSE公式サイトより
ホワイトハウスで「子供を職場に連れてくる日(Take Your Kids to Work Day)」に出席したメラニア夫人。