実績があっても許されない「不機嫌」の罪深さ
警視庁本部の課長だった男性警視正(60)が、日常的に部下に不機嫌な態度を取り続け、部下を萎縮させ職場環境を悪化させたとして、2025年12月に「警務部長注意」の処分を受けていたことが判明しました。(毎日新聞、2026年3月10日)
この警視正は、決して「無能な上司」ではなく、吉本興業の芸人が関与したオンラインカジノ事件や、世間の注目を集めた退職代行サービス「モームリ」を巡る弁護士法違反事件の摘発など、数々の困難な事案を解決に導いてきた、誰もが認める「シゴデキ(仕事ができる)」人間でした。
仕事での評価は高く、順調に昇進を重ねてきたはずの彼が、なぜ「警務部長注意」という処分を受けるに至ったのか。そこには、現代の組織運営における「新常態(ニューノーマル)」が鮮明に表れており、この事件の真の意味を考えてみたいと思います。(ちなみに、この方は処分と関係なく3月9日付で辞職したそうです)
昨今、カスハラ(カスタマーハラスメント)、モラハラ(モラルハラスメント)、さらにはお酒の強要であるアルハラ、不快な臭いを放つスメハラ、リモートワーク下でのリモハラ……と、次々に「○○ハラ」という新語が登場しています。
暴言にも劣らない受動的攻撃の恐ろしさ
今回、警視庁もその存在を認める形となった「フキハラ(不機嫌ハラスメント)」とは、職場において不機嫌な態度や言動を繰り返すことで、周囲に不快感や精神的苦痛を与える行為を指します。
従来のパワハラが「怒鳴る」「つるし上げる」「ネチネチと執拗にイヤミを言う」といった「能動的・直接的な攻撃」であるのに対し、フキハラはより「受動的・間接的な攻撃」に近いのが特徴です。パワハラ防止法は企業にパワハラ対策を義務化し、セクハラについては男女雇用機会均等法などが法規制をしています。
これらは、一つひとつを取り上げれば「本人の性格」や「その日の体調」として見過ごされがちなものです。しかし、それが日常的に、かつ優越的な立場にある人間から行われた場合、周囲のスタッフに与えるダメージは、直接的な暴言に勝るとも劣らないものとなります。私はハラスメント対策や研修の講師として、日本中の企業や団体を回っています。そこで出会う管理職の多くは、もはやハラスメントを意識していない人など一人もいません。

