悪質なクレーマーに対して、どのように対応すればいいのか。クレーム対応研修講師の津田卓也さんは「クレームを受けたときに、相手の主張を全面的に認めて謝罪するのはNG。全面的に謝ってしまうと、訴訟でも不利になるリスクがある。悪意のあるクレームを付けられた場合は、部分謝罪フレーズで対応したほうがいい」という――。(第3回)

※本稿は津田卓也『カスハラ、悪意クレームなど ハードクレームから従業員・組織を守る本』(あさ出版)の一部を再編集したものです。

指をさして怒鳴るビジネスマン
写真=iStock.com/kuppa_rock
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「全面謝罪」は絶対にNG

クレームを受けたら、どんなケースでも最初に部分謝罪をします。お詫びの言葉があるだけで、お客様の怒りを落ち着かせることができ、クレームの内容を具体的に聞き出しやすくなるためです。

しかし、謝罪をしたことを理由に、心理的に追い詰めてくる悪意クレームもありますので、どんなに慌てていても、「この件は、全て弊社(私)の不手際です、申し訳ありませんでした」などと、相手の主張を全面的に認めて謝罪することは絶対にしないことです。

「さっきは非を認めて謝ってきたじゃないか!」と対応の一貫性のなさを指摘されて状況が悪化しかねません。万が一、訴訟に発展したら不利になることもあります。部分謝罪は「お客様に今ご不便をお掛けしていることについて、誠に申し訳なく思っております」というように、何に対してお詫びをしているのかを、必ず明確に言葉にして伝えてください。

ここからは、便利で使い勝手の良い、部分謝罪フレーズをご紹介します。各フレーズが何に対して限定的な謝罪を行っているのかに注目してください。皆さんの業種に合ったフレーズが見つかると思いますので、ハードクレーム対応でパニックになったときでもすぐに言葉にできるよう、練習して覚えてしまいましょう。

「ご不快な思いをさせてしまい、申し訳ありませんでした」
→販売店、飲食店、アミューズメント施設、接客に慣れていないアルバイトのスタッフが多い時期や新人が多い時期など、スタッフ対応でクレームが多い現場で使用。

「ご心配をお掛けしてしまい、申し訳ありませんでした」
→保育所、学校、介護施設など、連絡系統が煩雑だったり、忙しかったりで、迅速な事実確認ができない現場で使用。

「ご不便をお掛けしてしまい、申し訳ありませんでした」「ご迷惑をお掛けしてしまい、申し訳ありませんでした」
→交通、インフラ、役所、メーカーなど、不具合が起こるとお客様の生活やお仕事に支障が出てしまう現場で使用。

「お時間をとらせてしまい、申し訳ありませんでした」
→コールセンターや案内所、レジなど、常に混雑していたり、確認に時間がかかったりでお待たせすることが多い現場で使用。

ほかにも、次のような部分謝罪のフレーズはあらゆる場面で使えますので覚えておきましょう。「ご足労をお掛けし、申し訳ありませんでした」「お手数をお掛けし、申し訳ありませんでした」「説明が不足し、申し訳ありませんでした」