「○○ハラ」という言葉が思考を停止させる
「何でもかんでもハラスメントと呼ばれたら、おちおち部下の指導もできない」
「少し厳しいことを言っただけでハラスメント扱いされるなら、もう何も言わないほうがマシだ」
こうした嘆きは、どの現場に行っても必ず耳にします。パワハラ防止法が企業に義務化され、セクハラについても法規制が強化される中で、管理職はかつてないほどのプレッシャーにさらされています。
しかし、私は「○○ハラ」というネーミング自体には、ほとんど対策としての意味はないと考えています。重要なのは、その行為が「組織の運営にどれだけの悪影響を及ぼしているか」という点なのです。
今回の事件で最も重要なポイントは、毎日新聞が報じた「職場環境を悪化させたとしている。パワハラには当たらないと判断された」という一文に凝縮されています。
厚生労働省が定義する「パワハラ3要件」は以下の通りです。
1:優越的な関係を背景とした言動であること
2:業務上必要かつ相当な範囲を超えていること
3:労働者の就業環境が害されること
警視庁が引いた境界線
確かにフキハラに該当する行為によって処分は行われたようですが、実際には「警務部長注意とする処分」という、停職や解雇というような重いものではありません。集英社オンラインによれば、「警務部長注意処分は懲戒ではなく『監督上の措置』だという」とのこと(集英社オンライン、2026年3月10日)。
ちょっとわかりづらいですが、懲戒かどうかはさておき、比較的軽度なものという位置付けなのでしょう。しかし、それでも「警務部長注意」という処分を下しましたが、これは何を意味するのでしょうか。
たとえ法に触れるレベルのパワハラではなくとも、部下を萎縮させ、報告・連絡・相談が滞るような職場環境を作ったこと自体が、「管理職としての能力欠如」であると警視庁は判断したのです。警察、消防、自衛隊、海上保安庁といった「実力組織」やスポーツ団体では、かつては「強い指導」の名の下に、多少の威圧や不機嫌は容認されてきました。しかし、そうした「古い常識」に、警察自らが明確な一線を引いたことの意義は極めて大きいと言えます。

