※本稿は、田原一郎『終末のジェンガ』(ワニブックス【PLUS】新書)の一部を再編集したものです。
「直美」は恥ずべきことなのか
臨床研修2年間を終えてすぐに美容クリニックを選んだ医師は、「けしからん」という雰囲気で社会から批判される傾向にあります。では、その批判の中身はどのようなものなのでしょうか。
まずは、「楽な道を選んだ」「金儲け主義」だというもの。
美容クリニックを選ぶということは、職場環境が楽なのに給料が抜群によいというイメージが強いため、こうした批判が生まれるのでしょう。「救急や外科のような過酷な現場から逃げた」「本当に医療に貢献する気があるのか」といった声も聞かれます。
特に、医師不足が深刻な外科や救急医療といった診療科を避けて、より快適で収入の高い道を選んだと見なされることで、「医師としての使命感が欠けている」という批判につながっているようです。
そして、「あの医者は怖い」という技術への不信感。
「たった2年研修しただけの医者なんて、技術的に未熟に決まっている。そんな人に自分の体を触らせるのは怖い」「医学の常識すら知らないかもしれないから信用できない」――そんなイメージを持つ人が多いと考えられます。
実際、美容医療では注射や手術などの手技が必要になることもありますが、「十分な臨床経験を積んでいない医師に任せて大丈夫なのか」という不安は患者側からすれば当然でしょう。また、万が一トラブルが起きた時に、適切な対応ができるだけの医学的スキルがあるのか疑問視する声もあります。
「ならざるを得ない理由」が無視されている
それでは、臨床研修を終えてすぐに美容クリニックへ就職すると批判にさらされることは十分わかっているのに、なぜ美容クリニックを選ぶのでしょうか。美容クリニックを選んだ医師たち全員が、単純に「楽で儲かるから」という理由だけで選んでいるのでしょうか。
不思議なことに、批判する側は「なぜそうせざるを得なかったのか」という理由には目を向けません。情報に著しい偏りがあるように思います。
もちろん、「楽で儲かるから」という理由の人も少なくないでしょう。医師も同じで、そういう動機の人もいるはずです。
しかし、現実はもっと多様です。美容クリニックを選ぶ動機は様々です。
そもそも美容医師になった理由が、「楽で儲かる」とは無関係に、「美容医療で人をキレイにして喜んでもらいたい」という人もいます。美容医療に純粋な情熱を持って医師を目指した人たちです。

