とんでもない要求をしてくる「モンスタークレーマー」には、どう対応するべきか。作家の草下シンヤさんは「自分の無知や過失で相手を傷つけてしまったときは、誠心誠意謝ることが大切。ただ、クレームに謝るときには守るべきポイントがある」という――。

※本稿は、草下シンヤ『怒られの作法』(筑摩書房)の一部を再編集したものです。

電話に向かって叫ぶ男性のシルエット
写真=iStock.com/nito100
※写真はイメージです

「この写真は掲載していいなんて言ってない」

自分の無知や過失で相手を傷つけてしまったときは、誠心誠意謝ることが大切です。ただ現実には「知りませんでした」「申し訳ありませんでした」だけでは済まないケースもあります。特にビジネスで実害が生じたときは、真心を尽くすよりも金を払って解決したほうがいいこともあります。

私が編集を担当した本に『ルポ西成 七十八日間ドヤ街生活』があります。著者の國友公司さんが約2カ月半、大阪の西成区のあいりん地区で実際に働きながら住人や労働者の実態をレポートした本なのですが、出版するにあたってこんなトラブルがありました。

本書には、「西成の案内人」としてサカモトという人物が登場します。実際に著者が西成を案内してもらった人で、全5章のうち丸々1章登場する重要な人物です。

サカモトさんは取材にとても協力的で、「自分のこと書いていいよ」「写真も載っけていいよ」と言ってくださいました。おかげでとてもスムーズに取材を進められたのですが、本の発売後に、そのサカモトさんから抗議の電話がかかってきたのです。

「ここに写ってるの、俺だ。この写真は掲載していいなんて言ってない」

サカモトさんが指摘してきたのは、本の冒頭に掲載した西成の街路を撮った写真でした。よく見ると、夜道を歩いている後ろ姿の人物が写っており、たしかにサカモトさんのようでした。

著者に確認したところ、サカモトさんが言うように、この写真については掲載許可をもらっていなかったようです。その時点で著者はサカモトさんにめちゃめちゃ怒られていて、どう対処すればいいのかわからない様子でした。