日本人は世界からどのように評価されているのか。医師の和田秀樹さんは「『即断即決できない交渉下手』といわれることもあるが、それは誤解だ。マイナス面ばかり強調されがちなのは、外国人が商談で自分が有利になるように仕向けるための戦略ではないか」という――。

※本稿は、和田秀樹『60歳からの仕事の壁 10年後も食える人、1年後すら危ない人』(青春新書インテリジェンス)の一部を再編集したものです。

日本とアメリカの国旗
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成否は「アナログ脳」の差で決まる

全国の小学校で定着した「調べ学習」。自分がわからない言葉や事柄に対して、ネットで検索して正解を見つけるのではなく、図書館に行ったり、辞書や百科事典を引いたりして調べる学習法です。

アナログな方法だと思う人もいるでしょう。しかし、パソコンなどのデジタルツールをあえて使わないメリットがあります。ひと手間かけて答えを探すことで、調べることが単に正解さえわかればいいという単純作業ではなくなるからです。

あるいは、紙媒体の辞書のページをめくることで、調べたい目的以外の単語や図版も目に入ります。新たに興味や好奇心が生まれ、さらに知識を広げてくれる効果があるのです。

また、このようなアナログ式勉強法で自分自身の知識量を増やしてから、デジタルツールを使ったほうが飛躍的な力を発揮できます。

たとえば、知らない単語を電子辞書で引く場合、英単語を1万語知っている人だと類似語や例文まで覚えやすく、実用的に身につきます。しかし、500語程度しか知らない人は、目的の単語の意味を知るだけで、そこから知識が広がりにくいのです。

とはいえ、いまどき、パソコンもスマホも一切使わない“アナログ派”は少数でしょう。

とくにビジネスはデジタルなしで成立しません。しかし、デジタルツールは、脳をアナログにしてうまく使いこなすのがお勧めです。

どれだけデジタルツールの精度が進化しても、ビジネスは一筋縄でいかないものです。たとえば、アナログの最たるもの、“人間”を相手にしたとき、成否はアナログ脳の差で決まるといっても過言ではありません。

ネットは「考えるネタ」を見つけるところ

仮に、私と仕事をしたいと思う人がいたとしましょう。「実際に会ったときのフィーリングがすべてだ」と、事前情報がゼロに近い状態で来るのは論外です。私もそんな人につきあっているほどヒマではありません。多少は「和田秀樹」を下調べをしてきてほしい。

そこで一面的な情報だけを見て、私という人間を知った気になるのはデジタル脳です。私に批判的な意見はネット上に数多くあります。その1つ、2つの情報を読んで、「学歴論者」と決めつけるのは、デジタルツールをデジタル脳でしか使えていない。

ほめた情報、クサした情報の両方を取って、多少は「和田秀樹」という人間の全体像がつかめてくるでしょう。たとえウィキペディアでも、他人から見た情報を、ある範囲でまとめたものに過ぎないのです。

ですから、私のように本を出している相手なら、著書を読むのが理想的ですね。本人の書く物だから、著者の人間性の一端がにじみ出ているものです。

それでも、まだ相手をわかった気になるのは早い。実際に会ってみないとわからない、という余地は残しておくのがアナログ脳です。直接の対話というアナログのコミュニケーションを通して、相手の雰囲気とか、波長が合う部分が見えてきます。

このようにデジタルツールは、正解を知るためではなく、考える材料を集める目的で使うのです。アナログ脳でデジタル情報を有効に活かせれば、相手の人間性・周辺データを知る時間を短縮でき、ビジネスの交渉プランを練りやすくなります。