免疫力を上げる効果的な方法はあるか。免疫に詳しい大阪大学の宮坂昌之名誉教授は「本来免疫力は、何かを食べたり飲んだりしたからといって簡単に上下するものではない。ただし、ストレスだけは少し特別だ」という――。

※本稿は、宮坂昌之『あなたの健康は免疫でできている』(集英社インターナショナル)の一部を再編集したものです。

ティッシュで鼻をかむ女性
写真=iStock.com/Larisa Stefanuyk
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免疫力はすぐに上がったり下がったりしない

免疫力とは、自然免疫と獲得免疫を併せた総合力のことです。

筆者註※「自然免疫」は、生まれつき持っている免疫のこと。対して、「獲得免疫」は生後、感染経験やワクチン接種経験とともに獲得する免疫のことを指す。

自然免疫がうまく働かないと、一方の獲得免疫がうまく働かないので、自然免疫が大きく抑えられた時には獲得免疫の機能も強く抑えられるようになります。

しかし、体内では、自然免疫と獲得免疫はそれぞれ独自に機能調節されている部分もあります。少々何かがあったからといって、自然免疫、獲得免疫の両方の機能が一度に上がったり下がったりはしないようになっているのです。

食品からとった“菌”は腸に届くのか

腸内細菌の集まりをくさむらに見立てて、「腸内細菌そう(※)」あるいは「腸内フローラ」とよびます。

筆者註※生きた細菌の集合のこと。一般には「善玉菌」「悪玉菌」「日和見菌」などと表現されている。

拙著『あなたの健康は免疫でできている』でも詳しく説明していますが、免疫力はこの細菌叢によって影響を受けます。しかし、よほど大きなストレスがかからない限り、この細菌叢が短期間で急激に変わることは通常はありません。

たとえ口から市販のプロバイオティクス食品(ヒトに有益な作用をもたらす微生物を含む食品のこと)、あるいは医療用医薬品としてのプロバイオティクスを摂取することにより特定の細菌を取り込んでも、腸管にはすでに多くの細菌が満ち満ちているので、外来性の細菌が簡単に腸管に棲みつくようなことはありません(テレビや新聞で見ることとはかなり違いますよね)。

一部でも棲みつくようにするためには、かなり長期にわたるプロバイオティクスの摂取が必要です。