人手不足が深刻だ。新卒社員に長く働いてもらうためにはどうすればいいのか。組織開発専門家の勅使川原真衣さんは「昭和の大企業のような方針が新卒社員に与えているストレスは小さくない。新卒社員のやる気や能力だけではなく、経営者側の組織づくりの問題も大きい」という――。

※本稿は、勅使川原真衣『「働く」を問い直す 誰も取り残さない組織開発』(日経BP)の一部を再編集したものです。

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新卒社員の受け入れ準備は「内定前」から

すぐに辞めてしまったら大問題といえば、新卒社員も同じです。新卒採用でも、経験者採用と同様に、オンボーディングを活用できます。

新卒の場合、「過去に働いた経験」はありません。スキルに関しても、未知数の部分が大きいでしょう。ただ、適性検査の結果からは、とりやすい言動パターンがある程度予測できます。これは、学歴からその人がどれくらい仕事ができるのかを予測しようとするよりも有用でしょう。

それをもとに、上司やOJT担当者などが事前に打ち合わせを行います。自分たちの解釈の癖なども踏まえて、新卒社員の自走を助けるであろう指示の出し方や言葉のかけ方などを綿密に話し合っておきます。

そして、新卒社員の受け入れ準備は、かなり早い段階から取りかかったほうがいい。できれば、内定を出す前から、です。

新卒社員の配属先まで考えておく

最近は新卒採用のプロセスにおいて、最終面接の前などに、選考が進んだ学生と若手・中堅社員を会わせて話をしてもらう機会があります。人手不足の昨今、新卒採用も売り手市場ですから、学生側に「選ばれる」ために自社のことをよく知ってもらうことが大切ですよね。このとき、どの社員に会ってもらうかがまず重要になります。

その学生と同じ大学出身の若手社員や、その学生が配属を志望する部署の人に会わせるのがいいと思うかもしれません。確かに、それも一理あります。

ただ私は、もっと踏み込んで、「この学生のこういう側面はこの部署のこのチームに配属すれば補完関係ができて伸びそうだから、チームのキーマンである○○さんに会ってもらおう」というところまで考えておくのがいいと思っています。

学生が志望している部署の人に会ってもらえば、相手を尊重している印象を与えることができるかもしれません。しかし、学生は就職活動を通じて企業研究を行い、志望する会社について知識を得てはいるものの、20年ちょっとの人生経験しかないわけです。それをもとに「この部署で働きたい」と志望しても、本当にそれが向いているかどうか分かるはずもありません。

ゆえに、「どの部署のどのチームが良さそうか」を考えるのは、人事担当者の腕の見せどころ。ですから、部署ごとにどんな人に来てもらいたいのかを、しっかりと考えておく必要があります。