長生きの秘訣は何か。免疫に詳しい大阪大学の宮坂昌之名誉教授は「スポーツ選手の寿命が短いという説があるが、一概にそうとは言えない。免疫学の観点から、運動には少なくとも6つの効能がある」という――。

※本稿は、『あなたの健康は免疫でできている』(集英社インターナショナル)の一部を再編集したものです。

メジャーをお腹に巻いた太ったカップル
写真=iStock.com/Vadym Petrochenko
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笑うことよりも大事なこと

前回の記事では、「笑うこと」の免疫効果についてお話ししました。

免疫力の維持には笑うことも大事かもしれませんが、運動をすることはもっともっと大事です。

実際、これまでに多くの論文が免疫力維持における運動の意義について報告しています。

特に、定期的に運動をすることによってすべての病気の死亡率が下がり、慢性疾患の発症やさまざまな病気の発症率もかなり低下することがわかっています。免疫力を落とさないようにするためにはとても確実な方法です。

ただし、運動をする場合、激しい運動である必要はありません。ともかくからだを動かすことが大事で、それを定期的に行うことによって、次第に病気になって死亡する率が下がっていきます。

Warburton DER & Bredin SSD, Curr Opin Cardiol, 32(5):541, 2017.

「やりすぎ」は逆効果

どのぐらい運動をしないといけないかは、個人の活動状況、健康状態などに依存します。

からだが元気で動ける人は、無理のない範囲でどんどん動くのがいいでしょう。

一方、からだの自由度が下がっている人は、自分なりにできる範囲で無理せずに動くことが大事です。どちらの場合にも、運動のやりすぎはかえって逆効果になります。

スポーツのやりすぎがからだに良くないのは、過剰な運動によって筋肉などの組織が傷つき、それによってからだの自然免疫が過剰に刺激を受け、組織に炎症反応が起きるからです。

Nieman DC & Wentz LM, J Sport Health Sci, 8(3):201, 2019.

さらに心血管系に余計な負担をかけることにもなります。そのために免疫機能がかえって一時的に低下することになります。