スポーツ選手は短命なのか

それを反映していることなのかどうか、よく「スポーツ選手は短命である」と、いろいろなところに書かれています。確かに競技スポーツでは、激しいトレーニングや食事制限などが続くことがあり、肉体的に大きなストレスになることがしばしばあります。

しかし、1998年に書かれた『スポーツと寿命』(大澤清二著、朝倉書店)という本では、男女を区別せずにスポーツ種目ごとに平均寿命を見ています。当時の平均寿命は男性77.2歳、女性84歳だったのですが、この本によると、陸上中長距離選手では80.3歳、剣道77.1歳、ボート76.2歳とのことです。

これだけを見るとスポーツ選手の寿命が特に短いようには見えません。しかし、同じ本の中では、レスリングでは65.6歳、ボクシング61.5歳、相撲(プロ)56.7歳と書かれていて、からだに直接ダメージを与えるようなスポーツでは短命の傾向にあることが指摘されています。

ただし、これが選手生活の時のダメージによるものなのか、その後、競技スポーツを急にやめてしまったことが影響しているのか、それとも選手生活をやめてからの食生活を含む生活様式の問題だったのかなどについてははっきりしません。

虚血性疾患、脳卒中による死亡リスクも低い

一方、海外からもさまざまなデータが報告されています。たとえば、フィンランド代表として国際大会に出た、いわばエリート選手の平均寿命は、持久系スポーツ75.6歳、混合系スポーツ73.9歳、パワー系スポーツ71.5歳で、対照群は69.9歳だったことから、この場合もやはりスポーツ選手の寿命が短くはありませんでした。

Sarna S et al, Med Sci Sports Excerc, 25:237, 1993.

また、同じフィンランドの別の研究グループが同国の男性エリート選手と一般人を比べたところ、虚血性心疾患を起こすリスクは、持久系スポーツ、混合系スポーツで約3割減、脳卒中による死亡リスクは持久系スポーツで約5割減、混合系スポーツで約4割減と、いずれの場合もエリート選手のほうが一般人よりもリスクが低くなっていました。

ここでも「スポーツ選手だから短命」とか、「スポーツをやりすぎると病気にかかりやすい」とか、一概に言うことはできません。