※本稿は、『あなたの健康は免疫でできている』(集英社インターナショナル)の一部を再編集したものです。
「腸内環境を整えること」が大切な理由
巷では、「これを食べれば免疫アップ」というような健康情報や、栄養食品が多く出回っています。
前回の記事では、免疫力というのは、本来、何かを食べたり飲んだりしたからといって、簡単に上がったり下がったりするものではない、ということをお話ししました。
では、免疫にとって食べ物は重要ではないのかというと、そんなことはありません。
免疫力をバランスのいい状態で維持するには、まずは規則正しい生活を心がけることが重要です。なかでも過食、過飲をしないこと、適度に運動をすることが大事ですが、同時に、腸の調子を整えておくことが大事です。それが免疫力をいい状態に保つことにつながります。
なぜかというと、全身のリンパ球のうちのかなりが腸管に存在し、腸管自体が立派な免疫組織だからです。
腸管にリンパ球が多く集まっている理由は、腸管が主に食べ物など、外界からものを取り込む場所であり、異物の侵入を防ぐ免疫の最前線でもあるからです。
腸内環境が悪化すると何が起こるのか
腸管内にはおよそ1000種類、総数100兆個ともいわれる、とんでもない種類と数の腸内細菌が存在します。この腸内細菌を見張っているのが腸管の免疫細胞、特にリンパ球です。
逆に、腸内細菌の一部は腸管のリンパ組織の内部にまで入り込んで、リンパ球が特定の機能を持つように刺激を与えています。つまり、腸内細菌は、腸管リンパ球の働きを調節する役目も持っています。
腸内環境が一定に保たれないと、腸内細菌の組成が安定しません。そうなると、腸管の免疫環境に悪影響が出てきます。
内細菌の集まりを叢に見立てて、「腸内細菌叢」あるいは「腸内フローラ」とよびます。健康な人では腸内細菌叢の組成はだいたい安定していて、個人の中で大きく変化することはありません。
一方で、この腸内細菌叢の組成が異常になった状態のことを「ディスバイオーシス」といいます。腸内細菌叢が乱れた状態です。