おならの臭いは腸からのサイン

この状態が進むと、腸管内を覆う粘液が薄くなってきて、異物が侵入しやすくなり、炎症が起きやすくなります。

これは、腸管の自然免疫(われわれが生来持っていて病原体の侵入を防ぐために必要な非特異的な免疫のことで、腸管内腔の粘液もその構成成分のひとつ)が腸管の細菌叢によって機能調節を受けているからです。適当な細菌叢が存在すると、自然免疫がうまく刺激され、その結果、自然免疫が訓練されて、悪い働きをする細菌の侵入を防ぐ能力が上がるというわけです。

逆に、細菌叢が乱れると自然免疫がうまく働かず異物が侵入しやすくなり、炎症が起きやすくなります。ということは、腸内細菌と免疫細胞は共生をしていてギブ・アンド・テイクの関係にあるということです。この共生関係が大事なのです。

一方、これが乱れたのが上記のディスバイオーシスです。

この状態になると便秘や下痢、肌荒れなどがみられ、なんとなく体調が良くないという感じが続きます。おならの臭いや便通が変わってきた時にはこのディスバイオーシスになりかけなのかもしれません。注意する必要があります。

鼻をつまんで顔をしかめる女性
写真=iStock.com/Inside Creative House
※写真はイメージです

腸内環境を「整える栄養」「荒らす栄養」

この腸内細菌叢の安定化には食べ物が大きく関係します。

繊維分の多い食べ物は、排便活動を盛んにするとともに、繊維分は腸内細菌(特に有用な働きをする細菌)のいいエサとなります。

日本人の腸管には、食物繊維をエサとして発酵反応を促進する細菌が多く、そのような細菌からは「短鎖脂肪酸(※)」とよばれる健康に有用な一群の代謝産物が多く作られます。

筆者註※脂肪酸とは油脂の構成成分で、炭素が数個から数十個つながった構造をしていて、そのうち炭素数が6個以下のものが短鎖脂肪酸です。短鎖脂肪酸には、酢酸、酪酸、プロピオン酸などがあり、抗肥満作用、基礎代謝の向上、免疫細胞の機能的バランスの維持・改善や、腸の蠕動運動促進など、さまざまな作用があるといわれています。最近、健康にいい物質として大きく注目されています。

一方、過剰に脂肪を摂取すると、胆汁酸(脂肪を乳化して分解・吸収を促進する物質)が胆管から腸管内に多量に分泌され、このため細菌叢が不安定化して、ディスバイオーシスが起きる原因となります。

過度のアルコール摂取もディスバイオーシスを起こします。過食、過飲をせずに、ふだんから腸の調子を整えておくこと大事です。