※本稿は、富士通「テクノロジーニュース」の記事〈CES2026で定義された「産業AI革命」とは何か〉(1月9日公開)を再編集したものです。
「産業AI革命」というCES2026の本質
2026年のCESは、もはや「最新技術の展示会」ではなかった。それは、世界の産業が今後どのルールで競争し、どの主体が価値を握るのかを定義する場だった。
その核心は、多くの基調講演の中でも、2社の基調講演と展示内容に集約されている。
1月5日の基調講演でエヌビディアが示したのは、AIの主戦場が、言語(LLM)から「世界そのもの」へ移行したという決定的な転換だった。
そして翌日、ドイツの機器・システム世界大手シーメンス基調講演では、そのAIを現実世界で止めずに動かすための「AI産業革命」が、明確な構造として提示された。
重要なのは、この二つが別の話ではないという点だ。同じ産業転換を、異なる視点から、しかも提携関係にある2社が最初から企図して語った。それがCES2026の本質である。
第1章:エヌビディアが示した「問い」とシーメンスが示した「答え」
エヌビディア基調講演で示された最大のメッセージは明確であった。AIの主戦場は、もはや言語(LLM)ではない。物理世界そのものである。
ロボット、自動運転、工場、倉庫、インフラ。AIは「答える存在」から、「見て・理解し・判断し・動く存在」へと進化した。
しかし、この圧倒的なフィジカルAIのビジョンには、必然的に一つの問いが残る。
そのAIを、誰が、どの責任で、止められない産業の中に実装するのか。
この問いに、エヌビディア1社では答えられないことも明らかであった。
ドイツの最強企業シーメンスが示した「答え」
シーメンス基調講演は、この問いに対する完成された答えであった。その象徴が、この言葉に集約されている。
「Industrial AI Revolution」
ここで重要なのは語順である。
シーメンスは「AI産業革命(AI Industrial Revolution)」とは言わなかった。産業AI革命(Industrial AI Revolution)と言ったのだ。
これは単なる言葉選びではない。主語をAIではなく、産業に置いたという明確な意思表示である。
産業は、AIに革命される対象ではない。産業は、自らの論理・制約・責任の中でAIを組み込み、革命を起こす主体である。この思想こそが、シーメンス基調講演の背骨であった。
さらに重要なのは、なぜ「Transformation」ではなく「Revolution」なのかという点である。
・Revolution:工場、産業、競争のパラダイムやルールそのものを変える
シーメンスはここで宣言した。
AIは“製造業を良くする道具”ではなく、製造業そのものの物理法則になる。
これは、蒸気機関/電力/ITに続く、第四の産業革命の「実装宣言」であると。

