「早めの総合感冒薬」が効く根拠はない
寒い時期になると、テレビでよく耳にするフレーズがあります。「早めの○○」「喉からくる風邪には○○」「風邪を早く治そう」――そう総合感冒薬のCMです。
こうしたCMの影響で、風邪をひいたかもしれないと思ったら、すぐに総合感冒薬を飲まなければならないと思い込んでいる人は決して少なくないでしょう。
しかし、早めに総合感冒薬を飲んだからといって風邪が早く治るわけではありません。風邪はほとんどがウイルス感染で、ウイルスを直接やっつける薬は存在しません。総合感冒薬に入っているのは、熱を下げる成分、鼻水を止める成分、咳を抑える成分、痛みを和らげる成分といった「対症療法」の薬なのです。
ですから、風邪の症状を一時的に抑えることはできても、風邪そのものを治すわけではありません。それどころか、内容によっては逆効果になる可能性すらあるのです。
今回は、風邪に総合感冒薬が本当に必要か、医学的根拠に照らして考えてみます。そして、医師として風邪にどのような対処をしているのかお伝えしましょう。
本当に風邪に効く成分が入っているのか
まず、総合感冒薬に含まれている成分は本当に風邪に効くのでしょうか。
例えば、「喉の痛みに効く」とされるトラネキサム酸。確かに抗炎症作用はありますが、喉の痛みへの効果を示す医学的根拠はかなり限られています。日本の過去の研究で一定の効果が報告されているものの(※1)、国際的な大規模研究では明確な結論が出ていないというのが正直なところです。ただし、飲んでも危険な合併症が増えるわけではないと考えられるため、病院で処方されることもあります。
抗ヒスタミン薬というアレルギー薬は、鼻水を止めるとされています。しかし、風邪のときに鼻水が出るのは、ウイルス自体やウイルスと戦った白血球の死骸を体外に出すための生理的な反応。だから、どんどん出したほうがよいのです。無理に止めようとしても止まりませんし、中耳炎のリスクが増えるという報告もあります(※2)。医師の間でも基本的に出さないほうがよいというのがコンセンサスです。
咳止めについても同様です。信頼性の高い医学研究の統合分析では、咳止め薬が咳を減らすという確実な証拠は見つかっていません(※3)。とはいえ、つらい咳を少しでも和らげようと、咳止めを処方する病院もあるでしょう。
※1 竹中洋、斎藤洋三、他「咽頭炎に対するトラネキサム酸の臨床効果」耳鼻咽喉科臨床.1979;72(増3):1123–1131.
※2 Wald ER, Guerra N, Byers C. Upper respiratory tract infections in young children: duration of and frequency of complications. Pediatrics. 1991;87(2):129–133.
※3 Smith SM, Schroeder K, Fahey T. Over-the-counter (OTC) medications for acute cough in children and adults in community settings. Cochrane Database Syst Rev. 2014;2014(11):CD001831.

