愛媛県今治市の「七福タオル」は、本来廃棄される糸を活用した商品で累計5000万枚を売り上げ、ピーク時の年商は15億円に達した。しかしバブル期は赤字に苦しみ、崖っぷちだった。危機の町工場はいかに逆転し、ロングセラーを生んだのか。2代目社長の河北泰三氏に、フリーライターの伏見学さんが取材した――。
「七福タオル」2代目社長の河北泰三さん
筆者撮影
「七福タオル」2代目社長の河北泰三氏

廃棄糸のタオルが5000万枚売れた

鮮やかでカラフルなストライプデザインが目を引く、高級感漂うタオル。このタオルは本来ならば廃棄される糸を活用して作られたものだ。

「MOTTAINAI(もったいない)」という言葉が世界に広まり、地球規模でエコ意識が高まる現代において、商品の製造過程でムダを省くことはごく当たり前の風潮になっている。しかし、35年前の大量生産・大量消費時代にこうした商品を考案し、ロングセラーにつなげた会社がある。タオルの一大産地、愛媛県今治市に本社を構える七福タオルだ。

残糸を活用した七福タオルのヒット商品「ネオ・リバイブ」
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残糸を活用した七福タオルのヒット商品「ネオ・リバイブ」

「ネオ・リバイブ」と名付けられたこの商品は、基本的に残糸ざんしからできている。生地を織る前に原糸を染める「先染め」の技法でタオルを作る際、途中で糸が不足しないよう多めの糸を用意して織り上げるわけだが、そこで余ったものを残糸という。

実は、残糸を使ってタオルを製造すること自体、今治の他のタオルメーカーでも行われていた。しかし、ここまでデザイン性に優れた商品を作れるのは同社の強みといえよう。その理由は、同社の特色である「多色先染ジャガード織り」にある。

ジャガード織りとは、立体的な模様を生地に織り込んだもので、同社のこの技術は数十色もの細かな色分けをしているという点で業界でも珍しい。従って、残った糸もカラーバリエーションが豊富で、それがネオ・リバイブの商品の魅力となっているのだ。

ネオ・リバイブは2023年2月にリニューアルした際に付けられた名称だが、元々は1991年に「リバイブ」という商品シリーズで発売。現在までに累計5000万枚以上を売り上げているという。このヒット商品が生まれた背景には、業界の常識を覆す大胆な決断があった。

ヒットの裏に、苦悩の歴史

2006年にクリエイティブディレクターの佐藤可士和氏が手がけた「今治タオル」のブランド化によって、今でこそメーカー各社が独自の販路を築けるようになったが、かつては問屋・卸からの発注が基本で、なかなか差別化は難しかった。そうした中で七福タオルは、小売と直接取引するとともに、自社ブランド商品をいち早く確立したという先見性がある。しかも、残糸だからといって安売りはせず、品質を訴求した適正価格を貫いた。

ただし、これらは決して美談で語られるストーリーではない。同社の苦悩と、そこからの挑戦が生んだ経営努力による賜物だったのだ。

七福タオルは1959年創業。現社長の河北泰三氏は2代目にあたり、2002年に父・河北明氏の跡を継いだ。同社のルーツをさかのぼると、河北社長の叔父に行き着く。

「父は河北家の四男坊で、その父親、つまり私の祖父は、父が14歳の時に事故で亡くなったんです。それで1948年ごろに父の兄(長男)が『河北タオル工場』を創業して、それを父も手伝っていました。ところが、その叔父も短命で、40歳ぐらいで亡くなってしまったため、叔母が『もう河北タオルは廃業するから、今のうちに独立しなさい』と父に勧めたそうです」

社名の由来は、神社へ行っておみくじを引くと「七福」という文言が目に入り、それを付けたそうだ。

七福タオル本社
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七福タオル本社