安いことは本当にいいことなのだろうか。東京・町田の家電販売店「ライフテクトヤマグチ」は、かつて家電を安く売る“町の電気店”だった。社長の山口勉さんは、家電量販店が進出してきた1990年代に方針を転換し、安売りをやめた。それ以降、28年連続黒字を叩きだす地元の優良企業になった。なぜ山口さんは“高売り”に切り替えたのか。フリーライターの伏見学さんが、山口社長に取材した――。
東京都町田市の街道沿いに店舗を構える「ライフテクトヤマグチ(でんかのヤマグチ)」
撮影=プレジデントオンライン編集部
東京都町田市の「ライフテクトヤマグチ(でんかのヤマグチ)」

粗利率45%を叩きだす東京・町田の「町の電気屋さん」

レジカウンターの横にドサッと置かれた野菜や果物。店の入口の脇には酒類、菓子などがずらりと並んでいる。

「そのカボチャはこの間、北海道に出張していた社長が買ってきたものですよ。いつもそんな感じでダンボール箱ごと送られてくるんです」。レジに立つ女性スタッフがにこやかに教えてくれた。

レジ横には山口社長が買い付けた農産物が並ぶ
撮影=プレジデントオンライン編集部
レジ横には山口社長が買い付けた農産物が並ぶ

この店では毎月、筆ペン教室や健康測定イベントなども開かれている。

実はここ、れっきとした電気店である。東京都町田市の街道沿いに店舗を構える「ライフテクトヤマグチ(でんかのヤマグチ)」だ。運営元は株式会社ヤマグチ。業界水準を遥かに超える約45%の粗利率を叩き出す店として知られている。その名声は海外にもとどろいており、中国の大手家電メーカー・ハイアールの総裁が直々に視察にやって来たこともある。

1960年代に自宅の物置小屋を改装して個人商店からスタートした同社は、数々の苦難を乗り越えてきた。最大のピンチは1990年代半ば。大手家電量販店が相次いで近隣に進出してきた時だ。ちょうどその頃、ヤマグチはいたずらに店舗数を増やしたり、価格競争に巻き込まれてしまったりして、赤字に陥っていたのである。

しかし、“黒船”の登場によって目を覚ます。従来のやり方ではとても太刀打ちできないことを悟った。そこで取ったのは、販売価格を上げて他社よりも高く売る代わりに、どこにも負けない手厚い顧客サポートを提供するという戦略だった。これが的中し、その後、28年連続で黒字経営を続けている。

たとえ企業規模が小さくても負けない戦い方とは。ヤマグチの経営の本質に迫った。