※本稿は、高橋亮『血管の名医が薬よりも頼りにしている 狭くなった血管を広げるずぼらストレッチ』(サンマーク出版)の一部を抜粋・再編集したものです。
90代になっても元気な人の共通点
私の外来に通われていた最高齢の患者さんは、なんと105歳でした。
最後まで自分の足で歩いて来院され、駐車場から100メートルほどの距離もゆっくりと自力で歩かれていました。
転倒による外傷で亡くなられましたが、それまでずっと、家事や身の回りのことも自分でこなされていたのです。
多くの患者さんを診てきて感じることがあります。
それは、90代になっても元気に通われる方々に共通するのは、「自分の足で歩ける」ということ。足腰の強さが、そのまま心臓の強さと寿命につながっているのを実感します。
では、なぜ足腰の筋肉がそこまで生命力に直結するのでしょう。
それは、人体の多くの筋肉が下半身に集中しているからです。
人間の体には、約600の筋肉があります。そのうち、実に6~7割が下半身に集中しているのをご存知でしょうか。
なぜ下半身にこれほど多くの筋肉が集中しているのかというと、人間が二足歩行をする動物だからです。
四足歩行の動物は、体重を4本の足で支えます。
でも、人間は2本の足だけで、全身の重さを支えなければなりません。
しかも、ただ立っているだけでなく、走ったり、ジャンプしたり、階段を上ったりと様々な動きをこなします。
そのためには、強力な筋肉が必要です。だから、下半身には大きな筋肉が集中しているのです。
上半身を動かすより2倍以上効率的
そして、この事実が血管の健康にとって非常に重要な意味を持ちます。
筋肉を動かすと、その筋肉の中を通っている血管が引き伸ばされ、NO(※)の分泌が促進されます。
※筆者註:NOは一酸化窒素。血管の内側から分泌される「血管やわらか物質」。『血管の名医が薬よりも頼りにしている 狭くなった血管を広げるずぼらストレッチ』(サンマーク)で詳しく説明していますが、以下4つの働きがあります。①血管を広げる②血管をやわらかく、しなやかに保つ③血栓ができるのを防ぐ④動脈硬化を防ぐ
大きな筋肉を動かせば、それだけ多くのNOが分泌されます。つまり下半身を動かすことが、最も効率的にNOを生み出す方法なのです。
計算してみましょう。体全体の筋肉の70%が下半身にあるとします。腕や肩、胸など、上半身の筋肉は30%です。
つまり、下半身を動かすほうが、2倍以上効率的なのです。しかも、下半身の筋肉はひとつひとつが大きい。
その中には“四天王”とも呼べる筋肉たちがいます。
太ももの大腿四頭筋とハムストリング。
お尻の大臀筋。
ふくらはぎの腓腹筋&ヒラメ筋。
これら4つの筋肉は、体の中でも特に大きく、強力です。
「大腿四頭筋」は、体の中で最も大きな筋肉です。
太ももの前側にある、太くて長い筋肉。動かすだけで、大量のNOが分泌されます。
太ももの裏側にある筋肉「ハムストリング」も同様です。
歩く、走る、立ち上がるなど多くの動作に関わっています。この筋肉をストレッチすると、効率よくNOが発生します。


