信頼できる「エビデンス」があるものは多くない
それから、これもしばしば誤解されている点ですが、現在使われている医薬品としてのプロバイオティクスの多くはかなり以前に認可されたものであり、「投与したら、かくかくしかじかの効果があった」という程度の旧来の試験方法を用いて得られたものです。公平性、信頼性が高い二重盲検無作為化比較試験(※)が行われたものはほとんどありません。
筆者註※二重盲検無作為化比較試験とは、被験薬が投与される処置群と偽薬(プラセボ)が投与される対照群に分けて行われる試験で、処置群と対照群はまったくランダムに選ばれます。そして、治験に関わる医師と被験者のどちらもどのような薬が投与されるのか一切知らされません。これによって、医師、研究者の恣意や被験者の予見や期待などが排除されやすくなり、薬物の効果を正しく評価できるとされています。
一方、旧来の試験方法では、医師、研究者などが何を投与しているかを知った上で行っていたために、出てきたデータが必ずしも公平に扱われずに、いわゆるチャンピオンデータ(必ずしも再現性が高くないが、一見都合のいいデータのこと)が選ばれて使われてきた可能性が否定できません。
つまり、医薬品としてのプロバイオティクスには、臨床的に確かに効果があるというしっかりしたエビデンスがあるものが多くないのが実状です。
実際に有効成分が入っていないプラセボであっても、服用者が「効き目がある」と思い込むことによって病気の症状が改善するという「プラセボ効果」というものがあります。プロバイオティクスではこれがかなり働いている可能性が否定できません。
私が毎朝ヨーグルトを食べる理由
このように、実際には免疫力が急にアップするようなことはなかなか起こりにくいのです。
何かをたくさん食べたからとか飲んだからといって、免疫力がすぐに上がるようなことは期待できないと思ったほうがいいでしょう。
私自身は毎朝ヨーグルトを食べていますが、別に免疫力アップのためを思っているわけではありません。単なるルーチンみたいなものです。食べると、その日が始まるみたいな感じです。
あとでも述べるように、免疫力のもとである免疫系は、多種類の細胞から構成されていて、さらに血管系、神経系や内分泌系などのさまざまな生体系からの機能調節を受けています。複雑な仕組みなので、ちょっとやそっとの刺激で急に機能がアップするようなことはまずありません。