3日間で500万円を集めたストリップ劇場
戦後間もなく産声を上げ、かつては日本各地の温泉地や歓楽街に点在していたストリップ劇場。最盛期には全国で300軒以上あったが、風営法の改正や娯楽の多様になどによって激減し、現在では20軒ほどを残すのみとなっている。
そのうちの1軒が、松山市の道後温泉にある「ニュー道後ミュージック」だ。廃業の危機に立たされ、2025年11月にクラウドファンディング(CF)を利用して補修費の寄付を呼び掛けたところ、わずか3日間で目標の約500万円を突破した。支援の輪はその後も広がり続けている。風前の灯火にある「昭和のエロス」に、なぜ多く人々が魅了され、熱いエールを送るのだろうか。
ニュー道後ミュージックは、国の重要文化財「道後温泉本館」に近い飲食店が立ち並ぶ一角にある。店名は変わったものの、半世紀にわたって同じ場所で営業を続けてきた。今では、中四国に残る最後のストリップ劇場となった。
重い扉を開くと、円形のステージや花道を囲む40ほどの客席が目に入る。2階は全国の劇場を行脚する踊り子たちが、出演期間中に住み込む場所だ。板張りの外壁が印象的だが、裏に回ると外壁がはげていたり、トタンで修理をしたりした箇所も目につく。この劇場内で雨漏りが深刻化し始めたのは、2025年夏のことだった。
「女性に楽しんでもらえる場所に」
「これまでも雨漏りがある度に、その場所を修理して営業を続けてきました。しかし、屋根全体が老朽化して腐食が進み、手に負えない状態になってしまいました。このままでは漏電して照明などの電気器具も壊れてしまい、営業ができなくなる。まさに窮地に追い込まれたのです」。そう話すのは、ニュー道後ミュージックの運営会社社長、木村晃一朗さん(61)だ。
木村さんは20年ほど前に、知人からニュー道後ミュージックの経営を譲り受けた。同業者が次々と廃業していく中、ストリップ劇場を「いやらしいイメージから一新させ、女性に楽しんでもらえる場所にしたい」と試行錯誤を繰り返してきた。アーティストが踊り子にペイントする「裸体アート」やバンドとの共演、オリジナルの怪談話を演じる「怪談ストリップ」など、趣向を凝らした異色のステージも展開し、女性や若者といった新たな客層を獲得してきた。
もちろん、舞台上で踊り子が音楽に合わせて服を脱いでいく、定番のショーも健在だ。10日周期で3人の踊り子が出演し、午後5時からの4公演で、オリジナルのパフォーマンスを披露している。全国各地から駆け付ける、踊り子の「追っかけファン」の姿も珍しくない。
だが、経営は赤字続きで、雨漏りを止めようにも、補修費用を捻出するのは難しい。そこで頼ったのがCFだった。「目標金額に達しなければ廃業しかない。ストリップを見たいお客さん、そして踊り子のためにも、劇場をなくしたくない」。木村さんは危機感をストレートに訴えた。

